約束の日 (アルバム)

『約束の日』は、日本のシンガーソングライター尾崎豊が1993年にリリースした2作目のライブアルバムです。このアルバムは、『約束の日 Vol.1』と『約束の日 Vol.2』の2枚に分かれており、1991年のコンサートツアー「TOUR 1991 BIRTH」の最終公演、10月30日の代々木オリンピックプールでのライブ演奏を収録しています。

このツアーは、尾崎にとって約4年ぶりの大規模なコンサートツアーでした。1987年のツアー中断、逮捕、事務所との確執など、様々な困難を乗り越えての復活でした。ツアーでは、以前の所属レコード会社であるCBS・ソニーに再移籍し、アルバム『誕生』をリリースした後の全国ツアーでした。追加公演として「TOUR 1991 BIRTH ARENA TOUR 約束の日 THE DAY」が開催され、その最終日がこのアルバムの収録対象となりました。

尾崎のコンサートは過去に延期や中断が多く、イベンターから敬遠されていました。そのため、ツアー中は体調管理に気を配り、ホテルもスポーツクラブやサウナ付きを選ぶなど、万全の状態で臨みました。しかし、ツアー中には様々なトラブルも発生しました。雑誌編集長との決別、打ち上げでの激しい言動、スタッフへの理不尽な態度など、尾崎の精神的な不安定さが浮き彫りになりました。ツアー終了時には、事務所スタッフが総入れ替えになるほどでした。

1992年には新作アルバムのレコーディングに入りましたが、プロデューサーとの決別、アートディレクターとの確執など、制作過程でも問題が続出しました。アルバム完成直前には、尾崎は泥酔状態で発見され、その後急逝してしまいます。そのため、このアルバムに収録された1991年10月30日の代々木オリンピックプール公演が生前最後のコンサートとなりました。

このアルバムの音源は、会場の特性上、観客の歓声が大きく収録されており、臨場感あふれるライブ体験を味わうことができます。開演前のSEとしてハワード・ジョーンズの「悲しき願い」が使用され、尾崎はMCでその曲のテーマに触れ、自身の楽曲「誕生」へと繋げています。ライブでは、「FIRE」から始まり、「Driving All Night」、「十七歳の地図」、「Scrambling Rock'n'Roll」とアップテンポな曲が続き、その後「僕が僕であるために」や「ロザーナ」、「虹」など、ミドルテンポの曲が演奏されました。「卒業」の演奏前には、ピアノで学校のチャイムを模した演奏を行い、ファンへのメッセージを送りました。終盤には「LOVE WAY」、「KISS」、「RED SHOES STORY」が続き、「FREEZE MOON」ではステージの鉄柱によじ登りながらMCを行いました。本編ラストは「永遠の胸」、「太陽の破片」、「誕生」で締めくくられました。

アンコールでは、「I LOVE YOU」、「シェリー」が演奏され、2回目のアンコールでは「15の夜」を弾き語りで披露しました。さらに、この日だけのサプライズとして、「ダンスホール」も演奏されました。本来は20曲の予定でしたが、アンコールで急遽3曲目が追加された形です。この「ダンスホール」の音源は、シングル「15の夜 (ライブ)」のカップリングに収録されています。ライブ終了後、尾崎は次回のツアーについて言及しましたが、それが実現することはなく、この日が最後のライブとなりました。

アルバムは、『Vol.1』には7曲、『Vol.2』には6曲が収録されています。ライブでの定番曲を中心に選曲され、「太陽の破片」はライブバージョンとしてアルバム初収録となりました。また、ツアーパンフレットには尾崎が書いた短編小説「約束の日」が掲載され、彼のニューヨークでの生活、ドラッグ体験、事務所とのトラブル、自殺未遂などが赤裸々に語られています。

リリース当時、批評家からの評価は賛否両論でした。観客の熱狂が伝わる録音状態を評価する声がある一方で、過去のライブビデオとの重複を指摘する声もありました。しかし、オリコンアルバムチャートでは、『Vol.1』が第1位、『Vol.2』が第2位を獲得し、22年間この記録を保持しました。2015年にゆずがこの記録を更新しましたが、尾崎のライブアルバムが1位と2位を独占したことは、彼の人気と影響力の大きさを物語っています。2012年にはCD-BOXとして再リリースされましたが、収録曲が一部カットされています。

『約束の日』は、尾崎豊の生前の魂が込められた貴重な記録であり、彼の音楽を愛するすべての人にとって、聴き逃せない作品と言えるでしょう。

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