約束の海

概要

『約束の海』（やくそくのうみ）は、日本の著名な小説家・山崎豊子の最後の作品で、彼の死後に発表されました。この物語は、海上自衛隊の若き士官と元海軍士官である父親を主人公に、戦争と平和のテーマに挑んでいます。2013年8月29日から2014年1月16日まで『週刊新潮』で連載されたこの作品は、全3部を予定していましたが、山崎が2013年9月29日に亡くなったために未完の状態となりました。

作品の背景

山崎は第1部の20回分の原稿を完全に書き上げていましたので、連載自体は完了しました。その後、2014年2月20日には新潮社から単行本が発売され、巻末には残りの2部の粗筋が掲載されています。この作品の内容は、海上自衛隊の潜水艦と遊漁船が衝突し、遊漁船が沈没するという実際の事故「なだしお事件」を想起させますが、年代設定には相違があります。

著者の思い

山崎豊子は、入院しながらも取材を重ね、原稿用紙に記した構想メモを基に物語を練り上げていきました。NHKの取材によると、病気のため直接取材できなかった彼女は、編集スタッフに取材リストを用意させ、徹底的な資料収集に取り組みました。このような経験を通じて、彼女が伝えたかったのは、戦争の悲劇がもたらす影響と、そこから学ぶべき教訓です。彼女は、戦争を二度と起こさないことが重要であると強く感じていました。

構想メモと物語の流れ

山崎が残した構想メモによると、作品の第2部では主人公がハワイに派遣され、父の過去へとさかのぼるストーリーが描かれる予定でした。そして第3部では、再び現代に戻り、東シナ海を舞台に物語がクライマックスを迎える構想がありました。このことから、『約束の海』は山崎豊子版の『戦争と平和』とも評されています。

登場人物

物語には、潜水艦『くにしお』の乗員としての花巻朔太郎（二尉）が中心人物として描かれています。彼の父である花巻和成は、戦時中に捕虜となった人物がモデルとされ、物語は親子の関係を通じて、戦争と平和の問題に迫っていきます。特に朔太郎は、自衛隊員としての任務に加え、父との関係を見つめ直すことが彼の成長に深く影響を与えます。

結局のところ

これほど大きなテーマを扱った作品が未完となったことは残念ですが、山崎豊子の遺した言葉や意志は、読者に戦争や平和について深く考えさせる作品として、今後も読み継がれていくことでしょう。彼女の作品が未完成であったにも関わらず、その意義は高く評価されており、文学における重要な位置を占めています。

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