紅樺色

紅樺色（べにかばいろ）は、樺色をベースに赤みを加えた色で、やや茶色っぽさも感じられる赤橙色です。一般的には「紅樺色」と表記されますが、「樺」や「椛」は当て字であり、本来は「蒲」と書きます。基本となる「樺色」は、カバノキの樹皮のような灰色がかったくすみのある褐色ではなく、ガマの穂のような、オレンジ色に近い明るい黄褐色を指します。ただし、蒲色やその派生色は「樺色」と表記されることが多いです。

江戸時代後期の染色に関する指南書である「手鑑模様節用」には、紅樺色は別名「紅柑子（べにこうじ）」と呼ばれており、一般には「紅うこん」の名で知られていたと記されています。

歴史と背景

紅樺色は、江戸時代中期に小袖の地色として広く好まれた色であり、「朱さくら（かばさくら）」という優雅な別名でも親しまれていました。この色は、紅うこんと同色とされることがあり、その場合は字義通り、ベニバナとウコンを組み合わせて染められていたと考えられます。しかし、江戸時代の紅鬱金の染色に関する文献を調べると、実際にはウコンに加えて、アカネやスオウといった植物染料を用いる方法が一般的であったとされています。

また、明治時代初期に描かれた「紅蒲形付の事」という資料には、紅樺色の染色方法として、阿膠（ロバから取ったゼラチン）を水に溶いて反物に塗り、カリヤスという植物を明礬で発色させて染めた後、石灰水にくぐらせるという方法が記載されています。この記述は、紅樺色の染色が必ずしもベニバナやウコンだけを用いていたわけではないことを示唆しています。

色の特徴と使われ方

紅樺色は、温かみのある赤みがかった橙色であり、落ち着いた印象を与える色です。江戸時代には、小袖の地色として用いられることが多かったですが、現代では、和装だけでなく、インテリアやデザインなど、幅広い分野で使われています。

参考文献

長崎盛輝著『日本の伝統色』青幻社

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