紅纓 (ミサイル)

紅纓（こうえい）シリーズ

紅纓（こうえい、中国語簡体字: 红缨, ピンイン: Hong-Ying）は、中華人民共和国が開発・製造した、歩兵などが肩で担いで発射する携行可能な地対空ミサイルシステム、いわゆるMANPADS（Man-Portable Air-Defense System）の一族を指します。このミサイルシリーズは、主として低空を飛行する航空機やヘリコプターを迎撃することを目的としており、地上の部隊が敵の航空攻撃から自身を守るための重要な防空兵器として位置づけられています。

本シリーズの公式な略称としては「HN-」（Hong-Yingのピンイン頭文字）が広く用いられていますが、資料によっては、中国が開発した別のミサイルシリーズ、特に艦船から対地・対艦攻撃に用いられる「海鷹（Hai-Ying）」シリーズと同じ「HY-」という略称が使われる例も見られます。この略称の重複は、時に混乱を招く可能性もあります。

中国人民解放軍は、自国の防空能力を強化するため、様々な種類の地対空ミサイルを開発・配備してきました。紅纓シリーズは、その中でも末端部隊にまで配備可能な軽量・簡便なシステムとして、特に重視されてきました。初期の開発段階では、既存の技術を導入し、それを基に国産化を進めるアプローチがとられましたが、後には独自の技術開発によるモデルも登場しています。

主な派生型

紅纓シリーズには、いくつかの異なるモデルが存在し、それぞれが開発時期や技術的な特徴を持っています。主な派生型として知られているのは以下のモデルです。

紅纓-5（HN-5）

シリーズの初期に開発されたモデルです。紅纓-5（HN-5）は、ソビエト連邦（現ロシア）で開発された有名な携行地対空ミサイル、9K32 ストレラ-2（NATOコードネーム：SA-7 グラール）を技術的な基盤としています。中国はソ連からこのミサイルの技術供与を受けるか、あるいはリバースエンジニアリングを行うなどして、国内での生産および改良型の開発を進めました。HN-5は、9K32の設計思想を受け継ぎつつ、中国独自の製造プロセスや一部改良を加えて国産化されたもので、中国人民解放軍の黎明期のMANPADS能力を支えました。

紅纓-6（HN-6）

紅纓-5に続いて開発されたモデルです。紅纓-6（HN-6）は、HN-5がソ連の技術を基にしたものであるのに対し、中国が独自に新規開発したとされるモデルです。このミサイルシステムは、中国国内では「飛弩-6（FN-6）」という名称でも広く知られており、しばしばHN-6ではなくFN-6として言及されることもあります。FN-6は、デジタル技術や赤外線画像（IIR）誘導方式を採用するなど、初期のHN-5と比較して技術的な進歩が見られるとされています。FN-6は派生型も存在し、例えば「FN-16」という改良型モデルも開発されています。

シリーズの発展

紅纓シリーズは、中国における携行地対空ミサイル開発の歴史において重要な位置を占めています。HN-5による技術導入と国産化の段階から、HN-6における独自技術による開発へと移行する過程は、中国の兵器開発能力の向上を示す一例と言えます。紅纓シリーズに続いて、中国ではさらに新型の携行地対空ミサイルが開発されています。その一つとして知られるのが「前衛（Qian-Wei）」シリーズです。前衛シリーズは、紅纓シリーズで培われた技術や経験を基に、さらに高性能化、多機能化が進められた後継システムとして位置づけられています。

これらのミサイルシリーズは、中国人民解放軍の末端防空能力を構成する根幹であり、国内外でのプレゼンスを高めています。紅纓、そしてそれに続く前衛といった携行地対空ミサイルは、中国の地域防衛戦略や、場合によっては輸出市場においても重要な役割を果たしています。

まとめ

紅纓（こうえい）シリーズは、中国が開発した携行地対空ミサイルの草分け的存在であり、ソ連技術の導入から始まり、独自の技術開発へと繋がる進化を遂げました。HN-5やHN-6（FN-6）といった主要モデルは、中国人民解放軍の低空防空能力を支える重要な要素であり、後継シリーズである前衛の開発にも繋がっています。これらのミサイルは、シンプルながら効果的な防空手段として、現代の戦場におけるMANPADSの重要性を体現しています。

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