納涼 (アルバム)

TUBE 12th Album 納涼

TUBEの12作目のオリジナル・アルバム『納涼』は、1992年6月10日に初回限定盤、同年6月13日に通常盤がリリースされました。前作『湘南』から約1年ぶりのフル・アルバムであり、全作詞を前田亘輝、全作曲を春畑道哉が手掛け、サウンド・プロデュースはTUBE、総合プロデュースを長戸大幸が担当しています。

特徴

本作は、それまでのTUBEの作品にはなかったサーフ・ミュージックやサルサ、ブルージーなバラードなど、様々な要素が導入されています。バラエティに富んだ音楽性が特徴で、ギターソロでは春畑道哉が初めてブルー・ノート・スケールを使用しています。また、全編において女性が主人公の歌詞の楽曲が存在するなど、新たな試みが多数行われています。

背景

前年までの活動においてTUBEは新作アルバムのリリース前にコンサートツアーを開始していましたが、セットリストが前年のアルバム収録曲を中心とした内容になってしまうことをメンバーは疑問視していました。また、新作が存在しないことからコンサートツアーのタイトルが決めづらいことや、4月の段階でフルアルバムをリリースすることが日程的に困難であることを受け、議論の末にミニ・アルバムをリリースすることを決定しました。

初のミニ・アルバム『Smile』(1992年4月15日リリース)は、「ライブに来てくれる人達に楽しんでもらいたい」というメンバーの願いから、ライブで盛り上がると思われる楽曲5曲が収録されました。

録音と制作

レコーディングは1992年1月から観音崎マリンスタジオで行われました。例年は都内で行われていたレコーディングですが、「スケジュールがきついだけに、ゆったりした環境で作ってみたいよね」というメンバーの提案により、海が見える同スタジオにおいて合宿形式でレコーディングが行われました。

メンバーの中で最も凝り性である角野秀行は、アルバムに収録される全曲のレベルの差を均一にするため1曲ずつミキシングを調整していました。角野にとってアルバムは子供のような存在であり、手が掛かれば掛かるほど愛情が湧くと述べています。

楽曲と音楽性

本作は『湘南』に次ぐ漢字2文字で命名された作品であり、同作と同様にストレートなタイトルであると指摘されています。音楽性の裾野の広さが最大の特徴であり、あらゆるジャンルの音楽性を導入することを可能にしているのが、どのようなサウンドにも対応できる前田亘輝のボーカルと4人全員に蓄積された音楽性であると評されています。

収録曲

「ノッてけ '92」は、90年代のサーフ・ミュージックを体現したサウンドで、過去作において「夏・海・音楽」をテーマとして音楽制作を行っていたTUBEが、初めてサーフ・ミュージックのフレーズや音色を大胆に導入しました。

「夏だね」は、14枚目のシングルとしてリリースされ、TUBEの定番曲のようにも聴こえるものの、春畑道哉がギターソロにおいてブルー・ノート・スケールを使用したのは同曲が初でした。前田亘輝は本曲について「夏のハシからハシまでお世話するTUBEとしては夏を告げる曲が必要でしょ」と述べています。

「夏が咲く」は、キューバ系のリズムを採用しており、ラテン音楽でありながらも哀愁を感じさせるキューバ民族音楽の特徴を活かしたサウンドになっています。TUBEの楽曲では初めて楽曲全編において女性を主人公にした歌詞となりました。

「だいじょうぶ」は、ブルージーなバラードであり、その世界観は前田亘輝のソロ作品においては存在したものの、TUBEの楽曲として取り入れられたのは初でした。

「君となら」は、TUBEとしては初めて結婚を題材にした楽曲であり、「結婚式の定番になったらいいなぁ」という前田亘輝の願望が込められています。

リリースと評価

本作はオリコンアルバムチャートにおいて、初回限定盤がTUBEのアルバムとしては初となる最高位第1位を獲得しました。売り上げ枚数は80万枚を超え、日本レコード協会からダブル・プラチナ認定を受けています。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、前田亘輝のボーカルによって表現されることで「ニッポンの情景が鮮明に浮かんでくる」と評価されています。

ツアー

本作リリース後には、ミニ・アルバム『Smile』を受けたコンサートツアー「TUBE LIVE AROUND '92 I Love Your Smile」や、野外ライブツアー「TUBE LIVE AROUND SPECIAL '92 夏だヨ! 全員集合」が開催されました。野外ツアーでは、水柱や特効などの派手な仕掛けが取り入れられ、聴衆を大いに盛り上げました。

『納涼』は、TUBEの音楽性の幅広さと新たな挑戦が詰まった、夏を彩る名盤として、多くのファンに愛されています。

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