納谷嘉信

納谷嘉信：色彩学を彩る先駆者

納谷嘉信氏（1927年-2009年）は、日本の色彩学研究において卓越した功績を残した著名な学者です。大阪電気通信大学名誉教授として、長年にわたり教育と研究に尽力しました。兵庫県出身の納谷氏は、大阪大学工学部電気工学科を卒業後、同大学にて工学博士号を取得。その後の研究活動は、色彩学の多岐にわたる分野に大きな影響を与えました。

色彩学への多大な貢献

納谷氏の研究は、色彩測定から色知覚のメカニズムまで、実に幅広いです。彼は、実用的な色温度計の開発に成功し、色の見え方の研究にも深く関わりました。Donaldson Colorimeterの校正やCIE 1964等色関数への貢献など、色彩測定技術の向上にも尽力しました。さらに、色の対比効果の予測モデルの構築や、視覚誘発脳波の分析を通じて、色の知覚メカニズムの解明にも挑みました。

昼光シミュレータの評価法や観測者メタメリズムの研究、色順応モデルの開発など、数々の画期的な研究成果を発表しています。特に、色順応効果の予測に関する研究は高く評価され、後に日本照明賞を受賞するに至ります。また、ヘルムホルツ・コールラウシュ効果に関する実験と予測、AC法とVCC法の違いを発見するなど、色の見えに関する知見を深めました。物体色の色知覚属性の研究や、ヘリングの反対色理論の修正提案なども行い、色彩学理論の発展に貢献しました。

国際的な活躍と受賞歴

納谷氏は、日本色彩学会会長、第8回国際色彩学会（AIC）京都大会組織委員長を務めるなど、国際的な舞台でも活躍しました。その功績は高く評価され、数々の賞を受賞しています。1966年の照明学会賞を皮切りに、日本照明賞を二度受賞（1983年、1986年）、デミング賞本賞（1985年）、スガウェザリング技術振興財団科学技術賞（1986年）、国際色彩学会ジャッド賞（1993年）、勲4等瑞宝章（1997年）、日本色彩学会賞（1998年）、スガウェザリング技術振興財団特別技術功労賞（2002年）など、輝かしい受賞歴は、氏の研究の重要性を示しています。

教育者としての貢献

研究活動に加え、納谷氏は教育者としても大きな役割を果たしました。後進の育成に力を注ぎ、多くの優秀な色彩研究者を育て上げたことは、氏の大きな功績の一つです。

出版物

納谷氏は、多くの著書を発表し、その知見を広く社会に共有しました。『産業色彩学』は、色彩学の基礎から応用までを網羅した、代表的な著作です。その他にも、TQC（Total Quality Control）に関する著書を複数執筆しており、品質管理の分野にも貢献しています。

まとめ

納谷嘉信氏は、色彩測定技術の向上から色知覚メカニズムの解明、そして国際的な活動まで、色彩学のあらゆる分野に多大な貢献をしました。その業績は、日本の色彩学研究の発展に大きな影響を与え、今日の色彩科学の基礎を築いたと言えるでしょう。彼の研究精神と指導力は、未来の色彩研究者たちにも大きな影響を与え続けることでしょう。

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