納谷廣美

納谷廣美（なや ひろみ）氏は、1939年8月15日に北海道で生まれた日本の著名な法学者です。専門分野は民事訴訟法であり、長年にわたり明治大学で教鞭を執り、同大学の学長としてその発展に大きく貢献しました。また、弁護士としても活動した経歴を持っています。

北海道旭川東高等学校を卒業後、1962年に明治大学法学部で学びを終え、同年には司法試験に合格しました。さらに法学研究を深めるため東京大学大学院法学政治学研究科に進み、1966年に修士課程を修了。その後、司法修習生として実務に触れ、1968年には弁護士登録を済ませました。

弁護士としての活動と並行して、母校である明治大学での教育者としてのキャリアをスタートさせました。1968年に法学部専任助手として着任以来、専任講師、専任助教授を経て、1980年には同学部教授に昇任しました。教授としては法学部長も務め、教育・研究活動において中心的な役割を果たしました。

2004年からは明治大学法科大学院教授も兼任し、同年4月には明治大学の総長兼学長に就任しました。当時の日本の私立大学は、都心から郊外へのキャンパス移転を進める傾向にありましたが、納谷氏はこれに対し「都市型大学宣言」を打ち出し、都心キャンパスの優位性を改めて強調しました。この大胆な戦略は、明治大学の魅力を高め、一般入試の受験者数を日本一に押し上げるなど、顕著な成果をもたらしました。この功績から、納谷氏は「明大中興の祖」と称されるようになりました。2005年には総長制の廃止に伴い、明治大学学長として改めてその職務に専念しました。

学長としての職務に加え、納谷氏は学内外の多岐にわたる重要な役職を歴任しました。大学基準協会会長や日本私立大学連盟常務理事・副会長、日本私立大学団体連合会委員、私立大学退職金財団理事など、高等教育界全体の発展にも寄与しました。また、弁護士としての立場から、日弁連法務研究財団評議員や法科大学院協会副理事長を務め、法曹養成制度の改革にも関わりました。民事訴訟法学会理事として、専門分野の研究振興にも尽力しました。さらに、早稲田大学での非常勤講師を務めるなど、教育活動も積極的に行いました。

2012年3月、任期満了に伴い明治大学学長を退任。その後も明治大学学事顧問として大学運営に関わり、2012年5月には名誉教授の称号を授与されました。

その長年の功績は国内外で認められています。2009年7月には、フランス共和国政府より国家功労勲章オフィシエを受章。さらに2017年4月には、日本国政府より瑞宝重光章を受章しました。

研究者としては、民事訴訟法に関する多くの著書や共編著を世に送り出しています。『民事訴訟法 事例式演習教室』や『講義・民事訴訟法』など、教育現場で広く利用される書籍を執筆しました。また、占領期における日本の法制度改革に関する研究にも関心を持ち、アルフレッド・オプラーの回顧録などを翻訳・紹介するなど、幅広い学術活動を展開しました。納谷廣美氏は、法学者、教育者、弁護士として、学術界、教育界、そして法曹界に多大な貢献を果たした人物です。

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