紙入れ

紙入れ（かみいれ）

古典落語「紙入れ」は、日本の伝統的な演目の一つであり、艶笑落語やバレ噺として知られています。原話は、安永三年に出版された「豆談義」に収録されています。この話は、恋愛と人間関係を軽快に描いており、観客を笑わせる要素が満載です。

主な演者たち

「紙入れ」を演じる落語家は多く、その中には初代三遊亭圓遊や桂歌丸などの物故者が存在します。また、現役の落語家では三笑亭茶楽がこの演目に取り組んでおり、彼の演技でも楽しむことができます。これにより、時代を超えて多くの人々に愛されています。

あらすじ

物語の主人公は貸本屋の新吉です。彼は商家のおかみさんから熱い視線を受け、旦那の留守中に家を訪れるようにとの手紙を受け取ります。新吉は、このおかみさんに魅了されつつも、いつも面倒を見てくれる旦那に対して申し訳なさを感じています。

気が引ける思いを抱きながらも新吉はおかみさんの誘いに乗り、酒を勧められつつ、そのまま泊まることになります。しかし、そんな楽しい夜も束の間、旦那が急に帰宅してきて、新吉はあわてて逃げる事態に。おかみさんの巧みな計らいで裏口から脱出したものの、彼は自分が大切にしている紙入れを忘れてきたことに気づきます。

この紙入れの中にはおかみさんからの手紙が入っており、旦那はそれを以前に見たことがあるため、見つけられたら全てが終わってしまうかもしれません。新吉は恐れを抱きつつ、夜逃げも頭をよぎりますが、まずは様子を見るために翌朝再度旦那の家を訪れます。

ところが、旦那はいつも通りの元気な姿で新吉を心配します。新吉は思わず、実はおかみさんに惚れられて、一夜中過ごしてしまったこと、そして紙入れを忘れてしまった経緯を打ち明けます。どうやら旦那は、自分の家の話であるとは思いもよらず、新吉を気遣う言葉をかけてきます。

おかみさんは「浮気をするような巧妙な女だよ。そんな紙入れが落ちていたら、旦那が気づく前に片づけてしまうだろう」と語り、新吉を安心させます。旦那も冗談交じりに「紙入れに気づいたとしても、妻を奪われるような愚か者だとは思えない」と笑い飛ばします。

サゲ

この演目のサゲは、江戸落語では「そこまでは気が付くまい」という一言で締められますが、上方落語では、おかみさんが「その愚か者の顔を見たい」と言い、旦那が自分の顔を指差して「ここにおるで」と返します。このように、演者の技や地域ごとのスタイルが楽しめるのが魅力の一つです。

エピソード

1940年9月20日、警視庁はこの「紙入れ」を含む53演目を卑俗で低級とし、上演禁止とする決定を下しました。こういった経緯からも、この演目がどれほど社会的な影響を及ぼしていたかが伺えます。こうした歴史的背景も、「紙入れ」が語り継がれる理由の一つでしょう。

「紙入れ」は、その軽快なストーリーとユーモアで、今なお多くの人々に親しまれている古典落語として知られています。

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