紙牌

中国の伝統的な紙牌：歴史と多様なゲームの世界

中国の伝統的な紙牌は、トランプとは異なる独自の進化を遂げてきたカードゲームです。本稿では、その歴史と多様な種類、そして現代に残るゲームについて解説します。

紙牌の歴史：馬弔から遊湖、そして麻雀へ

中国におけるカードゲームの起源は古く、遅くとも15世紀には「葉子戯」と呼ばれるカードゲームが存在していました。この葉子戯は、「文銭・索子・万字・十字」の4つのスートからなる40枚のカードを使用し、「馬弔」「看虎」「扯章」といったゲームが楽しまれていました。

馬弔の起源は明らかではありませんが、水滸伝の人物が描かれていることから、12世紀以降に生まれたと考えられています。また、西洋のトランプの起源が馬弔にあるという説も存在し、その歴史の深さを示唆しています。

清代に入ると、馬弔は簡略化され、「遊湖」と呼ばれる3スート30枚のカードゲームが誕生しました。この遊湖は、複数の組を使用することもあり、「黙和」「碰和」「十湖」といった、ラミー系のゲームに発展していきました。麻雀はこのラミー系のゲームから発展したと考えられており、中国の伝統的なカードゲームの歴史と進化を物語っています。

清代には、紙牌を使った賭博や製造・販売が禁止されていたため、詳細な記録は少ないものの、『紅楼夢』などの古典文学作品にも紙牌ゲームの描写があり、当時の様子を垣間見ることができます。

19世紀以降は、西洋人による記録も残されています。様々な種類の紙牌が紹介されており、その多様性が改めて認識されます。ウィリアム・ヘンリー・ウィルキンソンは、多くの中国の紙牌を収集し、西洋に紹介しようと試みました。

紙牌の種類：地方色豊かな多様なゲーム

現代でも、中国各地には様々な紙牌が存在します。その種類は大きく分けて以下の通りです。

水滸牌

馬弔や遊湖につながる伝統的なカードです。現在では「客家六虎牌」や「六紅牌」など、少数の種類が残っています。これらのゲームは、トリックテイキングゲームや麻雀に似たゲームなど、多様なルールで楽しまれています。

客家六虎牌: 4スート38枚のカードを使用し、天九に似たトリックテイキングゲームが有名です。
六紅牌: 四川省沐川県のカードで、4スート36枚のカードを使用します。
南通長牌: 江蘇省のカードで、3スート120枚のカードを使用する麻雀に似たゲームがあります。
曹州紙牌（水滸紙牌）: 山東省のカードで、水滸伝の人物が描かれているのが特徴です。
東莞牌: 香港のカードで、麻雀風のゲームが楽しまれています。
トートム: ベトナムのカードですが、中国の紙牌と類似性が高いです。

字牌

漢数字が書かれたカードです。「跑符子」「偎麻雀」「大字牌」「橋子牌」「瀘州大弐」など、様々な種類があります。これらのゲームは、麻雀と似たルールで楽しまれます。

象棋牌

シャンチー（中国将棋）の駒の名前が書かれたカードです。「四色牌」「釣魚牌」「タム・クック」など、様々な種類が存在します。

紙骨牌

牌九牌をカード化したものです。「十五湖」「四川長牌」「花湖牌」「花花牌」などがあります。

その他

「娃兒牌」「上大人牌」など、地域特有の紙牌も存在します。

「フー」という用語

伝統的なカードゲームの名前にしばしば見られる「湖」「糊」「胡」「壺」「和」は、すべて「フー（hú）」と読み、「勝ち・得点」を意味します。

現代の紙牌

現代では、多くの伝統的な紙牌が衰退しつつありますが、地域によっては盛んに遊ばれているものもあります。それぞれの地方で独自に発展してきた紙牌は、中国の豊かな文化と歴史を反映しています。

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