素晴しい旅行

素晴しい旅行

「素晴しい旅行」（すばらしいりょこう、英題：THE FREE TRAVEL）は、日本の人気グループ、ザ・タイガースが1970年7月1日にリリースした通算13枚目のシングル盤です。この作品は、グループの後期における重要な位置を占める楽曲であり、特にその作曲面に大きな特徴が見られます。

楽曲詳細

シングルA面に収められた表題曲「素晴しい旅行」は、作詞を山上路夫が担当し、作曲をグループのボーカリストである沢田研二が手がけました。この楽曲は、ザ・タイガースのシングルとしては初めて沢田研二が作曲者としてクレジットされた記念すべき作品となりました。沢田自身は、作曲に取り組むにあたり、グループの初期の代表曲であり人気曲であった「シーサイド・バウンド」の躍動的なリズムパターンを参考にしながら、新たな楽曲の方向性を模索したと言われています。このエピソードは、沢田がタイガースの音楽的なルーツを踏まえつつも、自身のクリエイティビティを発揮しようとした意欲を示唆しています。

編曲は、グループのギタリストであり、後に日本を代表するロックバンドを率いることになる井上堯之が担当しました。彼の編曲は、当時のザ・タイガースが目指していたサウンドの一端を垣間見せるものとなっています。

一方、B面には「散りゆく青春」（英題：THE FALLING OF YOUTHFUL DAYS）が収録されています。こちらも山上路夫が作詞を手がけ、作曲はギタリストの森本太郎が担当しました。編曲は作編曲家のクニ河内が手がけています。

このシングルは、A面、B面ともにグループのメンバー自身が作曲を担当している点でも特筆されます。これは、この時期のザ・タイガースが、演奏だけでなく楽曲制作においてもメンバーの創造性を重視する方向へと移行していたことを示唆しており、グループの成熟度合いや音楽性の変化を物語る重要な要素と言えるでしょう。

商業的成功と収録アルバム

「素晴しい旅行」は、オリコンチャートにおいて最高位15位を記録しました。総売上枚数は13.4万枚に達し、当時の日本の音楽市場において一定の商業的成功を収めたと言えます。これは、グループの人気が依然として高かったこと、そして楽曲が当時のリスナーに受け入れられたことを示しています。

A面、B面両方の楽曲は、1970年にリリースされた編集盤『THE TIGERS AGAIN』に収録されました。このアルバムは、当時の最新音源を中心に構成されており、オリジナル・アルバムに準ずる位置づけを持つ重要な作品となっています。

ザ・タイガースのキャリアにおける位置づけ

1970年という年は、日本のグループ・サウンズ（GS）ムーブメントが収束へと向かっていた時期にあたります。ザ・タイガースも例外なく、その音楽性や活動形態を変化させていく中で、「素晴しい旅行」はリリースされました。メンバー自身が作曲を手がけたこと、特に沢田研二が初めてシングルの作曲を担当したことは、グループが単なるアイドルバンドから、よりアーティスト集団としての側面を強めていった過程を示す出来事と言えるでしょう。

このシングルは、ザ・タイガースが解散へと向かう時期の作品ではありますが、メンバーの創造性が発揮された意欲的な楽曲であり、グループの後期における重要なレパートリーの一つとして記憶されています。それは、単にヒット曲としてだけでなく、グループの音楽的な変遷をたどる上でも興味深い一曲と言えるでしょう。

総じて、「素晴しい旅行」は、ザ・タイガースの歴史において、メンバーの作曲能力が開花し、グループが新たな音楽性を模索していた時期を象徴する、意義深いシングルであると言えます。

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