素焼き

素焼き（テラコッタ）とは

素焼き（すやき）あるいはテラコッタ（terra cotta）は、粘土を成形後、釉薬をかけずに比較的低い温度で焼成した焼き物のことを指します。この製法で作られた陶器は、釉薬を施した陶磁器とは異なり、素朴な風合いと独特の質感を持つのが特徴です。

素焼きの定義

素焼きは、その名の通り「素の」焼き物、つまり釉薬で覆われていない焼き物を意味します。具体的には、粘土を成形し乾燥させた後、釉薬をかけずに焼成することで作られます。日本語の「素焼き」と欧米の「テラコッタ」は、ほぼ同じものを指しており、国際的に共通の概念として認識されています。

色と性質

焼成過程で、粘土に含まれる鉄分が酸素と反応し酸化[[鉄]]を生成するため、一般的に素焼きは赤みがかった色になります。しかし、粘土の質や焼成条件によって、黄色、オレンジ色、茶色、灰色など、様々な色合いを呈することがあります。素焼きは、高温で焼成された焼き物に比べて柔らかく、壊れやすいという特徴があります。

歴史

素焼きの歴史は古く、古代から世界各地で様々な用途に用いられてきました。メソポタミア、古代ギリシア、エトルリアなどでも素焼きのものが作られ、古代ギリシアのタナグラ人形、中国の俑、日本の土偶や埴輪などがその代表例です。また、日本の縄文土器や弥生土器も素焼きの一種であり、同様に軟質で壊れやすい性質を持ちます。

15世紀にはヨーロッパで復興し、現在でも盛んに作られています。

焼成温度

歴史的な素焼きや遺跡から発掘された考古学的な素焼きの中には、600℃という低温で焼かれたものも存在します。近年の西欧では、一般的に1000℃前後の温度で焼成されます。一方、本焼き前の素焼きの温度は、地域や国によって異なり、日本では800℃前後で行われることもありますが、ベルギーの美術学校の陶芸コースでは、950℃、理想的には1060℃が最適だとされています。これは、使用する粘土の性質の違いによるもので、粘土内の成分をガスとしてしっかり放出させるためには、高温での焼成が必要とされています。

用途

素焼きは、その多孔質性から様々な用途に利用されてきました。

植木鉢: 世界中で広く使われており、保水性や通気性に優れているため、植物の栽培に適しています。
アロマテラピー: 精油を浸み込ませることで、香りを拡散させるアロマディフューザーとして利用されます。また、保湿性があるため、水を含ませたものを密閉容器に入れることで湿度を保つことも可能です。
湿度調整: 素焼きの小片は、適度に水分を吸収・放出するため、湿度調整剤としても利用されます。特に、手巻きタバコの湿度調整用品として使われることがあります。
食器: 日本では、かつて「かわらけ」と呼ばれ、酒を飲む皿として用いられていました。儀式や宴会で使い捨ての器として使われ、割ることを前提とした用途もありました。

まとめ

素焼きは、その素朴な風合いと多様な用途から、古くから人々の生活に密着してきました。歴史と文化が息づく素焼きの世界を、ぜひ楽しんでみてください。

関連項目

出石焼
備前焼
土師器
須恵器
* テラコッタ

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