細川両家記

『細川両家記』について

『細川両家記』（ほそかわりょうけき）は、永正元年（1504年）から元亀元年（1570年）までの戦国時代における畿内の政治状況を記した軍記物です。この文書は信憑性が高いと広く評価され、戦国期の政治史を理解するための貴重な史料として利用されています。

概要

本書の作者は生嶋宗竹で、彼は摂津国に住む国人であり、三好氏と密接な関係にあったと考えられています。『細川両家記』は、細川政元の養子問題に端を発した細川京兆家の分裂から、元亀元年の野田・福島の戦いまでを描写しており、特に細川氏と三好氏の動向に重点を置いています。作品は二つの部分に分けられ、天文19年（1550年）までの内容が前半部、天文20年（1551年）以降の内容が後半部とされています。

宗竹は69歳で上巻を記録し、その後「老耄」のために執筆を中断しましたが、後に受けた要請によって、92歳で下巻を完成させました。後半部は前半部とは異なり、内容が若干粗略であるため、別の著者によって補完された可能性があると言われています。

原本と写本

残念ながら『細川両家記』の原本は現存しておらず、さまざまな写本が存在しています。その中でも、国立国会図書館に所蔵されている貞享5年（1688年）に写されたとされる「細川両家見聞事記」および「細川両家後之巻」が、原本から記されたと考えられる重要な資料です。さらに、安永8年から文政2年の間に作成された『群書類従』本も広く利用されています。

評価

『細川両家記』は、一時史料ではありませんが、同時代に作成された文献であり、一次史料と比較することで信憑性が高いと認識されています。それにもかかわらず、作者は摂津や丹波地域の経験に頼った視点から記述を行ったため、彼の知らない情報や、幕府や朝廷に関する缺乏も見受けられます。これは、細川氏および三好氏の権力構造などについても同様であり、『細川両家記』を有益に活用するためには、これらの限界を意識することが求められます。

また、本書に登場する人名についても誤りが存在するため、他の一次史料との確認が必要です。文献としての慎重な取り扱いが求められ、多面からの検討を通じて、本書の意義や価値を見出すことが重要です。

参考文献

• - 古野貢・村井良介・藤本誉博・天野忠幸・小谷利明・西島太郎・藤本史子「戦国期畿内研究の再構成と「細川両家記」」『都市文化研究』第12号、2010年。
• - 和田英道「細川氏関係軍記考（一）書誌篇―永正期を中心とする―」『跡見学園女子大学国文学科報』第11号、1983年。

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