細野正文

細野正文の生涯とタイタニック号

細野正文（ほその まさぶみ、1870年11月8日 - 1939年3月14日）は、明治時代の重要な鉄道官僚として知られ、日本人として唯一タイタニック号の乗客となった人物です。彼の人生は、鉄道局でのキャリアと、タイタニック号沈没事件を通じて世間に広く知られるようになります。

来歴

細野は1870年、新潟県中頸城郡保倉村に生まれました。彼は豪農の四男として育ち、1896年には東京高等商業学校を卒業後、三菱合資会社に入社しましたが、すぐに退職し逓信省に転職。鉄道作業局に配属され、新橋駅（後の汐留駅）で貨物係としての仕事を始めました。1906年にはロシア語を学ぶため東京外語学校を修了し、翌年には帝国鉄道庁経理部の調査課に就任しました。

1908年には鉄道院の主事に昇進し、1910年にはロシアへの留学が命じられました。1912年、この留学を終え帰国する途中で、木下淑夫の勧めによりタイタニック号に乗船したのです。

タイタニック号乗船と沈没

細野はタイタニック号の二等船室に乗客として乗船しました。この船は1912年4月に沈没し、多くの乗客が命を落としましたが、細野は10号ボートに乗り込むことに成功し、生還しました。彼はその経験を、1912年7月に出版された雑誌『冒険世界』で語っています。

細野の生還は奇跡的であり、彼は日本人としては唯一の生存者となりましたが、その後、彼に対する疑いも生まれることになりました。

批判と名誉回復

細野はタイタニック号沈没後、名誉を傷つけられたと言われています。1997年には『週刊文春』で報じられたように、元乗客のローレンス・ビーズリーが著作の中で「他人を押しのけて救命ボートに乗った日本人がいた」と述べたことが日本で広まり、彼は厳しい批判にさらされました。一方、同じくタイタニック号の生存者たちの手記を調査した結果、ビーズリーと細野は別の救命ボートに乗っていたことが分かり、名誉回復が行われました。

安藤健二の調査により、当時の書物や教科書において細野に対する批判が見られないことも確認されました。この背景には彼が救命ボートに乗る際に特殊な状況にあったという事実がありました。メディアはこのノンフィクションを基に「名誉回復」という話を作り上げた可能性があるとされています。

家族

細野は土肥トヨと結婚し、三人の息子と一人の娘を持ちました。長男の細野日出児は家督を継ぎ、次男の細野日出男は交通学者として知られ、中央大学名誉教授などの役割を持ちました。三男の日出光と四男の日出臣もそれぞれの道を歩み、日出臣の子には独自のキャリアを持つミュージシャン・細野晴臣がおります。

死去

細野正文は1939年に68歳で亡くなり、多磨霊園に埋葬されました。その生涯は鉄道における多くの貢献と、世界的な歴史的事件の証人として非常に特別なものでした。彼の名は、タイタニック号の物語と共に語り継がれています。

もう一度検索