細静脈

細静脈 (Venule)

概要

細静脈（さいじょうみゃく、英語: venule）は、生体の循環系において、毛細血管の終端から血液を受け取り、より大きな静脈へと導く役割を担う、比較的細い血管です。その直径は概ね100マイクロメートルから200マイクロメートル程度の範囲にあり、文字通り「細い静脈」として分類されます。この血管は、組織の隅々で物質交換を終えた血液を回収し、心臓へと戻す静脈系の最初の部分を形成します。

微小循環系における位置づけ

体内の血管系は、動脈系、毛細血管網、そして静脈系に大きく分けられます。このうち、組織レベルでの物質交換が行われる毛細血管とその前後の細動脈、そして細静脈を含むネットワークは「微小循環系」と呼ばれ、局所的な血流調節や組織の機能維持に不可欠な役割を担っています。細静脈は、この微小循環系において、毛細血管からの血液を回収し、それを集合させてより太い静脈へと流すという、重要な中継地点としての機能を果たします。毛細血管が合流して細静脈が形成され、複数の細静脈がさらに合流することで、より大きな静脈（例えば小静脈、中静脈など）へと移行していきます。

構造的特徴

細静脈の血管壁の構造は、毛細血管に最も近い側（postcapillary venule, 後毛細血管細静脈）から、より太い静脈に近づくにつれて徐々に変化します。毛細血管に近い側の細静脈は、毛細血管と同様に一層の内皮細胞と基底膜、そして周囲を取り囲む周皮細胞（ペリサイト）から構成されることが多く、非常に壁が薄いのが特徴です。しかし、毛細血管からの血液の流入量が増え、血管径が大きくなるにつれて、血管壁の外側に結合組織の層が加わり、さらにまばらな平滑筋細胞が現れるようになります。これらの平滑筋細胞は、細動脈の壁に比べてはるかに量が少なく、収縮による血管径の変化は限定的ですが、ある程度の血管緊張や血流調節に関与しています。血管壁が比較的薄く、伸展性に富む構造は、細静脈が後述する容量血管としての機能を発揮する上で重要な要素となります。

容量血管としての機能

細静脈の最も特徴的な機能の一つは、「容量血管」としての役割です。全身を循環する血液のうち、かなりの割合（成人では約70%と言われることもあります）が静脈系、特に細静脈やより太い静脈に貯留されています。これは、動脈系が高圧で血液を駆出するポンプのような役割を担うのに対し、静脈系は比較的低圧で、血管壁が薄く柔軟性があるため、多くの血液を保持するのに適しているからです。細静脈は、静脈系の始まりとして、毛細血管で酸素や栄養素を組織に渡した後の血液を効率的に集め、一時的に貯留する機能に寄与します。この血液貯留機能は、体液量の変動や姿勢の変化などに応じて、全身の血液分布を調節し、心臓への血液還流量を制御する上で非常に重要です。例えば、必要に応じて細静脈が収縮することで、貯留していた血液がより中心側の循環系に移動し、血圧の維持や心臓への負担調節に貢献します。

まとめ

細静脈は、毛細血管から静脈への血液の移行路であり、微小循環系における重要な構成要素です。その直径は約100〜200μm程度であり、毛細血管に近い側から静脈に近い側へと構造が連続的に変化します。特に重要な機能として、その薄く伸展性に富む血管壁により「容量血管」として働き、体内の血液のかなりの部分を貯留し、全身の血液循環調節に寄与しています。細静脈の健全な機能は、組織レベルでの血液回収、そして全身の血液循環システムの安定維持に不可欠な存在です。

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