組み手 (柔道)

組み手（くみて）

組み手とは、柔道において立技の攻防時に相手の道着をどのように掴むか、またそれに関わる技術のことです。より有利な体勢を築くための攻防は「組み手争い」と呼ばれます。相撲においても、互いの腕の位置や、右四つ、左四つといった型を指す言葉として使われます。

空手や沖縄古武術における「組手」は、柔道における乱取り（自由攻防）に相当し、二人で相対して行う自由な攻防を意味します。

概要

柔道のルールでは、立技における標準的な組み手として、「左手で相手の右側の上衣の帯よりも上部を、右手で相手の左側の上衣の帯より上部を握ること」が推奨されています。それ以外の部分を握ることは、反則と見なされるか、時間制限が設けられています。

最も基本的な組み手は、利き手で相手の襟（釣り手）を、反対の手で袖（引き手）を握る形です。右利きの選手がこの形で組むことを「右組（みぎくみ）」、左利きの選手の場合は「左組（ひだりくみ）」と呼びます。多くの技は、この基本的な組み手から繰り出されることを前提としています。

対戦相手の組み方が右組か左組かによって、自身の組み手も変わります。両者の組み手を含めた場合、同じ組み手同士を「相四つ（あいよつ）」、異なる組み手同士を「ケンカ四つ(けんかよつ)」と呼びます。

道着の位置

道着（柔道着）の各部位の位置を把握しておくことは、技をかける際に非常に役立ちます。

襟
前襟：胸の辺り
中襟：横襟とも言う。肩（鎖骨）の辺り
奥襟：後襟。首の後ろ
袖
前袖：手首の辺り
中袖：横袖とも言う。肘の辺り
奥袖：肩（三角筋）の辺り

基本的には上記の6ヶ所を基準に掴みますが、脇も襟または袖とみなされるため、時間制限はありません。

相四つ

右組み同士、または左組み同士の、互いに同じ組み手での組み方です。足の並びが対戦相手と平行になります。引き手から取りに行き、引き手の方向に動きながら圧力をかけるのが効果的とされます。

ケンカ四つ

右組みと左組み、または左組みと右組みのように、互いに逆の組み手での組み方です。足の並びがハの字になります。釣り手から取りに行き、釣り手の方向に動きながら圧力をかけるのが効果的とされます。

変則的な組み手

実戦では、標準的な右組・左組以外の組み手も見られます。以下にその一例を挙げます。これらの組み手の中には、時間制限が設けられているものもあります。

両襟: 両手で相手の襟を掴む。時間制限なし。
両袖: 両手で相手の両方の袖を掴む。時間制限なし。
奥襟: 引き手が相手の袖、釣り手が首の後の襟を掴むもの。一般的なルールでは時間制限なし。少年規定では、技を仕掛ける前の短い時間のみ認められる。
片襟: 引き手が相手の袖、釣り手が引手側の襟を掴むもの。または、片手または両手で片方の襟を掴むもの。時間制限あり（5秒以内）。別名ワンサイド・グリップ。
片袖: 片手または両手で相手の片方の袖を掴む。時間制限あり（5秒以内）。
帯をつかむ: 時間制限有り（5秒以内）。
クロスグリップ: 相手の肩・もしくは腕越しに背中を掴む。掴んだら、一気に技の体勢に入る必要がある。
ピストルグリップ: 相手の袖口を絞って、親指と四指の間で持つ。掴んだら、一気に技の体勢に入る必要がある。
ポケットグリップ: 袖口･裾口を袋取りで握る。掴んだら、一気に技の体勢に入る必要がある。
手首握り: 相手の手首を握る。掴んだら、一気に技の体勢に入る必要がある。
手四つ: 相手と指を組み合わす。相手と掌を合わす。一気に技の体勢に入る必要がある。
レッグエンタングレメントポジション: 脚を相手の脚に絡める、掛ける。一気に技の体勢に入る必要がある。
足を外に出す: 片足または両足を場外に出して組む。ただちに攻撃に入るか場内に戻らなければならない。
ベンディングポジション: 両手でつかまれているとき背を曲げた防御姿勢。ただちに攻撃に入なければならない。

反則となる組み手での行為

引っ張って自らや相手の上衣の裾を帯から外す（指導）。
両手で相手の握りをはずす（指導）。
脚や膝で相手の握りをはずす（指導）。
自らの襟を手で隠す（指導）。
* 相手の上衣を掴んでいない状態からのいきなりのベアハッグ(指導)。

脚掴みの禁止

相手の脚や下穿きを掴む行為は、国際ルールでは2009年10月から禁止となりました。これにより、脚を持って掴む技の使用が大きく制限されることになりました。ただし、肩車のように脚を掴まない技術は現在も使用可能です。

このルール変更は、ヨーロッパのジュニアの試合でレスリングのような試合展開が多発したことが背景にあります。国際柔道連盟は、この状況を「柔道の本質から外れる」と判断し、ルールを改正しました。

IJFは2009年10月から脚をとる組み手を制限し、連絡技・連続技・返し技に絡めずに、いきなりこれらの技を使うことを反則としました。寝姿勢の場合はこのような脚掴みの制限はありません。当初は一度目は指導、二度目は反則負けでしたが、2010年1月からは一度目で反則負けとなりました。その後、立ち姿勢の場合はいきなりでなくても反則となりました。

2015年までに帯より下の帯に入った上衣の裾掴みも脚掴みに含まれ反則負けに。
2017年、一度目は指導、二度目は反則負けに戻る。2018年、指導に変更される。また、裾と一緒に帯も掴んでいる場合は脚掴みとはならない。2019年までに国際規定において、帯と一緒に裾を掴むことは脚掴みにならず許されることに。

なお、これらの脚掴みの禁止扱いは国際柔道連盟柔道試合審判規定の試合においてであり、講道館柔道試合審判規定による試合・乱取りにおいては2009年以降から2022年現在も、禁止技にはなっておらず2008年以前と同様に使用可能。

一方、2025年の全日本柔道選手権大会では脚掴みルールの復活が発表されました。

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