経済学における収束

収束（Convergence）

収束は経済学において、貧しい国の一人当たり所得が豊かな国に比べて高い成長率を示す傾向を指します。この概念は、しばしば「キャッチアップ効果」とも呼ばれ、発展途上国が先進国の技術や制度を模倣することで急速に成長する様子を説明しています。

収束の理論的背景

ソローモデルによれば、経済成長は労働者一人当たりの資本が最適な水準に達するまで、物的資本の蓄積によって進むとされています。このモデルに従うと、一人当たり物的資本が低い国では急速な成長が見られ、その結果として全ての国の一人当たり所得が収束することが期待されます。発展途上国は、資本の収益率が先進国に比べて高い場合が多く、これがさらなる成長を促進する要因となっています。

収束の種類

経済成長における収束にはいくつかのタイプがあります。主に以下の二つに分類されます。

1. シグマ収束（σ収束）：経済全体における所得水準の分散が縮小していく過程を指す。
2. ベータ収束（β収束）：低所得国の所得成長率が高所得国の所得成長率を上回ることによって、所得水準の不均衡が解消されることを表している。

多くの経済学者は、収束を特にβ収束に関連付けて考えています。これに対して、オデッド・ガローは収束を異なる条件に基づいて分けています。主な考え方は、以下の通りです。

• - 絶対的収束（Absolute convergence）：初期GDPが低い国ほど成長率が高くなり、最終的に貧困が自然に解消されるという理論。
• - 条件付き収束（Conditional convergence）：国それぞれの特徴に基づき、労働者一人当たりの所得が特有の長期レベルに収束することを示します。これにより、対外援助の対象が構造的要因へシフトする必要があることが示唆されます。

収束の事例と分析

ジャック・ゴールドストーンは20世紀における収束の動きを分析し、第一次世界大戦前に大分散がピークに達した後、1970年代の不安定さを経て1980年代後半には多くの国が高い成長を遂げたことを指摘しています。日本や東アジアの国々は、成長のための社会的要因を持ち、急速に経済成長しました。

特に1960-1970年代には、シンガポール、香港、韓国、台湾が急成長し、戦後の資本再蓄積が成長に寄与しました。

限界と課題

一方で、全ての国がキャッチアップ成長を実現するわけではありません。モーゼス・アブラモヴィッツは、キャッチアップには社会的能力が求められると述べており、新技術の習得や資本のインフローが必要です。また、ジェフリー・サックスは、一部の国での閉鎖的な経済政策が収束を妨げていると非難し、自由貿易の重要性を説いています。

統一成長理論との関連

統一成長理論によれば、国によって経済成長の停滞から持続的成長への移行タイミングが異なるため、世界経済は異なる成長体制に分かれています。最終的には、全ての経済が収束することが期待されていますが、その過程においては一時的な現象としてのクラブ収束が観察される場合があります。

このように、収束は経済成長の重要な理論であり、今後の研究や政策立案において重要な役割を果たすことでしょう。

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