経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律

経済安全保障推進法の概要

経済安全保障推進法は、令和4年（2022年）に制定された日本の重要な法律の一つであり、岸田内閣が掲げる経済施策の基盤を形成するものです。この法律は、グローバルな競争環境の中で日本を守るため、特にアメリカと中国との関係において重要な役割を果たしています。現代における安全保障の概念を経済面に拡張し、日本国民の生活や経済的活動の安定を図ることを目的としています。

重要な目的と内容

この法律は、4つの主要な施策から成り立っています。まず一つ目は、半導体などの「特定重要物資」の安定的な供給を確保するためのサプライチェーン（供給網）の強化です。半導体は現代のデジタル社会に欠かせないもので、さまざまな産業で利用されています。そのため、供給の安定性は国家にとって極めて重要です。

二つ目は、サイバー攻撃への対応を強化するために、基幹インフラへの事前審査を行うことです。この審査は、重要インフラがあらゆるサイバー脅威から保護されることを目的としています。

三つ目は、官民の協力による先端技術の開発を推進することです。ここでは、産業界と政府が共同で新技術の研究や開発を行い、国際的な競争力を高めることが目指されています。

最後に、原子力や高度な武器に関する技術の特許を非公開にする制度が導入されています。これにより、国防に関わる機密情報が外部に漏れるのを防ぎ、技術流出を防止することが求められています。

政治的背景

この法律の制定にあたっては、自民党や公明党に加え、日本維新の会や国民民主党も賛成しました。一方、立憲民主党は企業活動への国の介入が強くなることを懸念し、最初は慎重な姿勢を崩さなかったものの、与党側の修正提案により最終的には賛成に回りました。また、共産党やれいわ新選組は反対の立場を取っています。

法律は2022年5月11日に制定され、同年5月18日に官報で公布されました。

特許出願非公開制度の仕組み

経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保に関連して、特許出願の非公開制度も重要な柱となっています。特許庁が一次審査を行い、その後内閣府で二次審査（保全審査）が行われます。この二次審査の結果に基づき、特定の技術が保全指定される場合、出願は公開されずに査定も行われません。このシステムにより、重要な発明の情報が外部に漏れないように配慮されています。通常、多くの特許出願はこの二次審査を受けることはなく、保全指定が行われるのは非常に稀です。

この法律は、公布の日から2年以内に施行される予定ですが、企業や研究機関にとっては、知的財産の扱いや国の方針を理解するための重要な指針となるでしょう。経済安全保障推進法は、今後の日本の経済と社会の持続可能性に大きな影響を与えるものと期待されています。

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