結 (仏教)

結（けつ）とは

仏教における「結（けつ）」は、輪廻を引き起こす原因である煩悩を指し、衆生を束縛し、苦しい生を繰り返す要因とされています。この結は、衆生の行動や思考を影響し、苦しみから脱却することを難しくさせます。

パーリ経典における結の分類

パーリ経典では、結は大きく「五下分結」と「五上分結」に分類されています。下分結は欲界に縛られるものであり、上分結は色界や無色界に関連するものです。これにより、衆生の悩みや苦しみの原因が明確に定義されています。

五下分結

1. 有身見（うしんけん） - 自分自身を五蘊として認識する見解。
2. 疑（ぎ） - 疑念。
3. 戒禁取（かいごんしゅ） - 誤った戒律への固執。
4. 欲愛（よくあい） - 五欲に対する執着。
5. 瞋恚（しんに） - 怒りや憎しみ。

この五つを克服することで、不還果に至ることが可能となります。その中でも、特に1から3の項目は「三結」と呼ばれ、予流果の段階で絶たれることが求められます。

五上分結

上分結に関しては、次のような種類があります。
1. 色貪（しきとん） - 色界に対する欲望。
2. 無色貪（むしきとん） - 無色界に対する欲望。
3. 慢（まん） - 自身の慢心。
4. 掉挙（じょうこ） - 心の不安定な状態。
5. 無明（むみょう） - 根本的な無知。

これらを絶つことにより、最終段階である阿羅漢果に達することができるとされています。

論蔵に見られる十結

論蔵に基づく分類では、さらに十結として次の要素が挙げられます。
1. 貪欲（とんよく） - 欲望。
2. 瞋恚（しんに） - 怒り。
3. 慢（まん） - 傲慢。
4. 見（けん） - 誤った認識。
5. 疑（ぎ） - 疑い。
6. 戒禁取（かいごんしゅ） - 誤った戒律への執着。
7. 有貪（うとん） - 存在への執着。
8. 嫉（しつ） - 嫉妬。
9. 慳（けん） - 物惜しみ。
10. 無明（むみょう） - 根本的な無知。

これらの結は、衆生が苦しみから解放されるためには克服しなければならない重要な要素です。結はただの理論ではなく、実践を通じて理解され、克服されるべきものであると言えます。

結の克服と解脱への道

仏教においては、これらの結を絶つためにさまざまな修行や瞑想が行われます。道徳的な教えや戒律を守ること、内面的な探求を行うことで、衆生は次第に束縛から解放され、最終的に解脱を目指すことができるとされています。仏教徒にとって、結を知り、それを克服していくことは、智慧を得る上で欠かせない道のりです。

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