衆生

衆生（しゅじょう）とは

仏教における「衆生」とは、一切の生きとし生けるものを指す言葉です。サンスクリット語の「sattva（サットヴァ）」、パーリ語の「satta（サッタ）」を原語とし、これらの言葉には「生きているもの」「存在する物」という意味があります。漢字の「衆生」は、多くのものが共に生存しているという意味を表す梵語の「bahujana（バフジャナ）」に由来するとも言われています。

衆生の多様な訳語

「衆生」は、玄奘三蔵の訳では「有情（うじょう）」と訳されました。これは、情、つまり心の働きを持つものという意味です。有情の対義語として、心を持たない「非情（ひじょう）」という言葉があります。また、「含識」「含霊」「含生」「含情」「群生」「群萌」「群類」など、多様な訳語が存在することも、この言葉が持つ意味の広がりを示しています。

衆生の意味と範囲

衆生という言葉は、人間だけでなく、動物など他の生命も含む広い意味で使われます。仏教の世界観では、衆生は「十界」という10種類の境涯の中の、前半の「六道」または「五趣」に属すると考えられます。これらの境涯の中で、衆生は生と死を繰り返し、輪廻転生を繰り返します。ただし、仏教、特に阿毘達磨倶舎論においては、植物は衆生には含まれないと考えられています。一方で、ジャイナ教では植物も衆生に含まれます。人間は、サンスクリット語で「manuṣya（マヌシャ）」といい、「考えるもの」という意味を持っています。

衆生と仏性

仏教の重要な教えの一つに、「一切の衆生は悉く仏性を有す」というものがあります。これは、すべての衆生は仏になる可能性を持っているという意味です。ただし、この言葉は、仏になれるのは衆生（有情）のみであり、非情の存在は仏になることができないという意味も含んでいます。

漢語を元にした解釈

「衆生」という言葉の原義については、さまざまな解釈があります。例えば、「衆多の法が仮に和合して生ずる」から衆生と名づけるという説や、「衆多の生死を経る」から衆生と名づけるという説があります。これらの解釈は、衆生が多くの要素が組み合わさってできている存在であり、輪廻転生を繰り返す存在であることを示しています。

まとめ

「衆生」は、仏教において非常に重要な概念であり、私たちの存在そのものを理解するための鍵となります。この記事を通して、「衆生」という言葉の意味をより深く理解していただければ幸いです。

参考資料

中村元他『岩波仏教辞典』岩波書店、1989年。ISBN 4-00-080072-8。
櫻部建、上山春平『存在の分析＜アビダルマ＞―仏教の思想〈2〉』角川書店〈角川ソフィア文庫〉、2006年。ISBN 4-04-198502-1。

関連項目

四生
凡夫
* 取税人

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