絡新婦

螳真不明の妖怪、絡新婦について

絡新婦（じょろうぐも）は、日本各地に広まる妖怪の一つで、その名は「女郎蜘蛛」に由来します。この妖怪は美しい女性に姿を変えることができるとされ、その魅惑的な見た目が多くの人々を魅了しました。絡新婦に関する記述は古くからあり、特に江戸時代の文献『太平百物語』や『宿直草』にその名が見られます。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、火を吹く子蜘蛛たちを従えた絡新婦の姿が描かれています。

古文献に見る絡新婦の姿

宿直草の物語

ある青年武士が仲間とともに過ごしていると、19歳から20歳の女性が子供を抱えて現れました。女性は子供に「この方は父でいらっしゃる」と言い、武士はその美しい姿に惹かれました。しかし、直感的に彼女の正体が妖怪であることを察知し、刀で斬りかかりました。その瞬間、女は天井裏へと逃げ去ります。翌朝、男が確認すると、切り傷を負った絡新婦が死んでおり、その周りには彼女に食い殺された無数の人々の死体が転がっていました。この物語は、絡新婦が恐ろしい存在であることを物語っています。

太平百物語の冒険

また『太平百物語』では、作州（現在の岡山県）での出来事が記されています。孫六という男が、50代の女性から「娘があなたに惚れている」と伝えられ、彼女の家に招かれた話です。そこには美しい16歳の娘がいて、孫六は求婚を受けますが、既に妻がいるために断りました。しかし、女は母が彼に殺されたところだと訴え、孫六は困惑しながら逃げ出します。すると屋敷は消え、彼は縁側に戻っていました。周囲には小さなジョロウグモがいて、彼は何が起こったのか悩むことになります。このように、絡新婦は夢なのか現実なのか分からない状況を引き起こす能力を持っています。

各地の伝承

伊豆市の浄蓮の滝

静岡県伊豆市の浄蓮の滝には絡新婦にまつわる伝説があります。ある男が滝の近くで休んでいると、無数の糸が足に絡みつきました。その男はその糸を木の株に結びつけましたが、その株ごと滝に引き込まれることになりました。以来、地元の人々は絡新婦を恐れ、滝に近づかなくなりました。しかし、ある木こりが誤って斧を滝壺に落としてしまい、取りに行くと美しい女性が現れ、斧を返して「ことを他言しないように」と告げました。彼は秘密を保ちながら日常を送りましたが、とうとう酒の席でその出来事を話してしまい、その後二度と目を覚ますことがなかったという話があります。

仙台市の賢淵

また、仙台市の賢淵には、切り株が絡新婦によって水中に引きずり込まれた後に「賢い、賢い」という声が聞こえたという伝説があります。これが賢淵の名称の由来とされています。この地域では、から新婦は水難除けの神として信仰されており、記念碑や鳥居が存在します。源兵衛という男性が、淵に住むウナギに美しい女性に化けて訪れられ、助けを求められましたが、恐れをなして自ら閉じ籠ってしまった結果、ウナギは絡新婦に敗れ、源兵衛は狂死してしまいました。

結論

絡新婦は、日本の民間伝承において、恐ろしい存在として恐れられている一方で、その魅力的な姿が人々を惹きつける存在でもあります。彼女の伝説は各地に広がり、今もなお多くの人々に愛されています。絡新婦の物語は、単なる妖怪伝説ではなく、人間の内面や心理を映し出す教訓となっているともいえるでしょう。

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