統合作戦司令官

統合作戦司令官とは

統合作戦司令官は、統合作戦司令部の長であり、防衛大臣の指揮監督を受け、統合作戦司令部の隊務を統括し、自衛隊の部隊運用を統合指揮する重要な役割を担います。

創設の背景

2011年の東日本大震災の経験から、統合幕僚長の職務が多岐にわたり、大規模災害や有事の際に、内閣総理大臣や防衛大臣への補佐と各部隊への指揮という二つの任務に忙殺され、迅速な対応が困難になる可能性が指摘されていました。

このような状況を改善するため、統合幕僚監部から運用部を切り離し、新たに統合幕僚監部とは別の常設の「統合司令部」を創設し、「統合作戦司令官」ポストを新設して部隊運用に専念させる構想が持ち上がりました。これにより、統合幕僚長は大臣の補佐に専念できるようになります。

設立の経緯

2022年12月16日に閣議決定された国家防衛戦略において、常設の統合司令部が設立される方針が示されました。これに基づき、2024年2月9日に統合作戦司令部の設置を盛り込んだ防衛省設置法等の一部を改正する法律案が国会に提出され、同年5月10日に可決・成立、5月17日に公布されました。統合司令部は、2025年3月に市ヶ谷に設置される予定です。

統合作戦司令官の権限と役割

統合作戦司令官は、四幕僚長と同格の4つ星の将官となります。四幕僚長が所属する四幕僚監部は防衛省本省の機関である一方、統合作戦司令部は三自衛隊の共同の部隊として、自衛隊内に設置されるため、統合作戦司令官は自衛隊内で最高位の自衛官となります。

統合作戦司令官の設置により、統合幕僚長が従来担っていた自衛隊の運用に関する最高指揮監督権を有する内閣総理大臣と防衛大臣の補佐を、統合作戦司令官が作戦上の自衛隊の部隊運用・指揮を分担することになります。

米軍との比較

アメリカ軍との関係でいえば、統合幕僚長は制服組トップの統合参謀本部議長が、統合作戦司令官はインド太平洋軍司令官がそれぞれカウンターパートとなり、作戦の調整などを行うことになります。ただし、統合幕僚長が最高位の自衛官であるという構図に変化はありません。

自衛隊法における規定

防衛省設置法等の一部を改正する法律（令和6年法律第24号）による改正後の自衛隊法では、統合作戦司令官の役割と権限について以下のように定められています。

第21条の2第3項：共同の部隊の運用に係る防衛大臣の指揮は、統合幕僚長を通じて行い、これに関する防衛大臣の命令は、統合幕僚長が執行するものとする。
第21条の3第2項：統合作戦司令官は、防衛大臣の指揮監督を受け、統合作戦司令部の隊務を統括する。
* 第21条の3第3項：防衛大臣は、自衛隊の運用に関し、統合運用による円滑な任務遂行を図る必要がある場合には、自衛隊の部隊の全部又は一部を統合作戦司令官に指揮させることができる。

まとめ

統合作戦司令官は、自衛隊の統合運用体制の中核を担う重要なポストです。その設置により、自衛隊の指揮系統がより効率化され、変化する安全保障環境への対応能力が向上することが期待されます。

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