統合多用途・将来型垂直離着陸機計画

統合多用途・将来型垂直離着陸機計画（JMR/FVL）

統合多用途・将来型垂直離着陸機計画（Joint Multi-Role/Future Vertical Lift、略称：JMR/FVL）は、アメリカ陸軍が新しいタイプの軍用ヘリコプターを開発し、運用性能を向上させるための包括的な計画です。この計画では、最先端のセンサー技術や航空工学の進化を踏まえた新しい回転翼航空機を開発しており、特に運用効率やメンテナンス性を高めることに重点が置かれています。

計画の背景と目的

米陸軍は2004年以来、各種回転翼機の問題点を認識し、これを解決するための新機体を必要としていました。既存機の多くはもはや現代戦争の要求に応えられない状況にあり、特に飛行時間の増加や故障のリスクに直面しています。このような課題に対応するため、陸軍は将来型垂直離着陸機計画を立ち上げ、複数の新しい機種を開発することを目指しました。

計画では、5種類の異なる機体を開発し、これらが共通のハードウェア、ソフトウェア、運用技術を共有する形で設計されています。さらに、将来的にはUH-60 ブラックホークやAH-64 アパッチなど、現在使用されているヘリコプターの代替機として機能することが期待されています。

技術仕様と要求

この新しい航空機は、200ノット（約370 km/h）以上の巡航速度、拡張された航続距離、または兵員や貨物の運搬能力において、現在の機種に比べて大幅な向上が求められています。航空機は最大で12人の兵員を搬送でき、戦闘行動半径は424 km（263マイル）を目標としています。また、無給油で848 km（527マイル）を飛行できる、という性能も求められる要件の一部です。これにより、長距離任務においても効率的な運用が可能となります。

開発段階

JMR/FVL計画は3つの開発段階に分かれています。最初の段階である「JMR TD」では技術概念を実証する機体が開発され、次に「JMR フェーズ I」では実用機の開発が行われます。最終的には「JMR フェーズ II」として航空作戦に必要な任務システムが構築されます。米陸軍は、最低でも約4,000機もの新たな回転翼航空機を調達する計画です。

参加企業と競合

多くの航空機メーカーがこの計画に参加しており、シコルスキー航空機、ボーイング、ベル・ヘリコプターなどが新たな機体を提案しています。それぞれの企業は異なる技術アプローチを採用しており、特に新しい設計による複合ヘリコプターやティルトローターの開発が注目されています。

例えば、シコルスキーとボーイングは「SB>1 デファイアント」という中型機体の技術概念実証機を共同開発し、他方、ベルは「V-280 ヴェイラー」というティルトローター機の設計を発表しました。これらの機体はそれぞれ異なる特性を持ち、米陸軍の様々な任務に対応可能です。

結論

統合多用途・将来型垂直離着陸機計画は、米陸軍の航空機運用を根本から変える可能性を秘めています。この計画の実現により、陸軍は現代の戦術や戦闘要件に応じた新しい機能を持つ航空機を手に入れることができ、未来の戦闘環境において重要な役割を果たすでしょう。

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