垂直離着陸機

垂直離着陸機（VTOL機）について

垂直離着陸機、通称VTOL機は、その名の通り、滑走路を必要とせず、垂直に離着陸できる航空機のことを指します。これには飛行船や気球などの軽航空機、あるいは回転翼機なども含まれる場合がありますが、一般的には固定翼機が主に扱われます。特に、電動のVTOL機は一般にeVTOLと呼ばれ、その形式には主に回転翼機が採用されています。

特徴と分類

VTOL機の一つの特徴は、その設計が多岐にわたっていることです。特に、固定翼機が垂直離着陸を行うためには、エンジンの力を使って機体を浮かせる必要が生じます。このため、軽量で高出力のエンジンと機体の組み合わせが求められるのです。また、離着陸時や遷移飛行中に空力的に安定を保つことができないため、動力による機体制御装置が必須となります。VTOL機はいくつかの異なる方式が存在しており、構造や推進方式との組み合わせにより、15～20種類に分類しています。これには以下のような形式があります。

• - コンバーチプレーン
• - ティルトローター
• - ティルトウイング
• - テイルシッター
• - 推力偏向
• - リフトエンジン

また、これらの機体はVTOL機能だけでなく、短距離離着陸（STOL）にも対応していることが多く、両機能を併せ持つ機体は「垂直/短距離離[[着陸機|垂直_短距離離着陸機]]」と称されます。

歴史

VTOL機の歴史は1928年に遡ります。この年、ニコラ・テスラがフリーバーと呼ばれる空中輸送装置の特許を取得し、VTOL技術に関する初期の試みとなりました。その後、第二次世界大戦中にはナチス・ドイツが滑走路なしでの迎撃機の開発を試みましたが、多くの機械が戦争終了まで実用化には至りませんでした。戦後、アメリカとフランスも同様のシステムを開発し、いくつかの機体が構想されましたが、実用化に成功したものは限られています。

特に1953年には、イギリスのロールス・ロイスがスラスト・メジャリング・リグという実験機を開発し、これがさらにペガサス・エンジンの開発に繋がりました。このエンジンは推力が偏向可能で、当時のホーカー P.1127に搭載され、1960年のホバリング飛行に成功しました。これは世界初の実用垂直離着陸機の開発に寄与しました。

アメリカでは、このハリアーが海兵隊に採用され、さらには発展型のハリアー IIが製造され、在る意味での逆輸出が行われました。また、70年代にNASAが開発したXV-15は、VTOL技術の一端を担い、後にV-22として実用化されます。

他にも、各国で様々なVTOL設計が試されています。例えば、フランスのミラージュIII Vバルザックは音速飛行が可能でしたが、複数のエンジンを必要とし実用化には至りませんでした。一方でアメリカやソビエト（ソ連）も独自にVTOL機の開発を行い、Yak-38やF-35Bなどもこの流れの一部として登場しています。

実用機と今後の展望

現在、実用化されているVTOL機にはハリアーやF-35B等があり、さらには民間機の分野でも開発プロジェクトが続いています。特に、Lilium Jetなどの電動VTOL機は新しい地平を開く存在として注目されています。

個人向けのVTOLも注目を浴びており、カナダのスカイカーや日本のGEN H-4などが開発されています。こうした技術の進展は、将来的に私たちの移動手段を革新する可能性を秘めています。

VTOL機は、その多様な形式と機能によって、航空機の未来において重要な役割を果たし続けるでしょう。

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