統計法

統計法について

統計法（平成19年法律第53号）は、日本の公的統計の作成と提供に関する基本的な枠組みを定める法律です。この法律は、公的統計の体系的な整備と効率的な運用を促進し、その有用性を確保することで、国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的としています。

公的統計とは

公的統計とは、国の行政機関や地方公共団体などが作成する統計のことです。統計調査によって得られたデータだけでなく、業務データを集計した統計や、既存の統計を加工して作成された統計も含まれます。

旧統計法から新統計法へ

現行の統計法は、1947年に制定された旧統計法を全面的に改正したもので、2007年に公布されました。旧統計法は半世紀以上にわたり日本の統計制度を規定してきましたが、社会経済の変化に対応するため改正されました。改正後の法律は「新統計法」と呼ばれることもあります。

改正の経緯

経済社会の実態をより正確に捉えるため、統計制度改革の必要性が提言されました。経済社会統計整備推進委員会と統計制度改革検討委員会の報告を経て、2007年に改正法案が国会に提出され、可決されました。新統計法は2009年4月1日に施行されましたが、一部の規定については施行日が異なっています。

新統計法は、その後も数回改正されています。

2008年：地方法人特別税等に関する暫定措置法による改正。
2015年：内閣の重要政策に関する総合調整等に関する機能の強化のための国家行政組織法等の一部を改正する法律による改正。統計委員会が内閣府から総務省に移管。
2018年：統計法及び独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律による改正。統計委員会の所掌事務と構成が明確化され、調査票情報の利用に関する規定が追加。
2021年：デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律による改正。個人情報保護に関する法制の整備に合わせ、関連条文が改正。
2022年：刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律による改正。刑法の改正に伴い、罰則関係の条文が変更。2025年6月16日施行予定。

新統計法の概要

新統計法は、以下の基本理念に基づいています。

公的統計の体系的整備を行政機関等の相互協力と役割分担の下に成し遂げること。
公的統計作成において中立性と信頼性を確保すること。
公的統計を国民が容易に入手し、効果的に利用できるように提供すること。
公的統計作成に用いた個人や法人等の秘密を保護すること。

これらの理念を実現するため、法律は以下のような事項を規定しています。

公的統計の整備に関する基本的な計画（基本計画）
基幹統計、基幹統計調査、一般統計調査
地方公共団体・独立行政法人の統計調査
統計に関する情報の政府内利用
調査票情報等の二次利用
情報の保護
統計委員会
罰則

法律における用語の定義

統計法では、以下の用語が定義されています。

行政機関: 内閣に置かれる機関、内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、内閣府設置法または国家行政組織法に規定される機関。
独立行政法人等: 独立行政法人のほか、法律で直接設立された法人、特別の法律により設立された法人など。
公的統計: 行政機関、地方公共団体、独立行政法人等が作成する統計。
基幹統計: 国勢統計、国民経済計算のほか、総務大臣が指定する重要な統計。
統計調査: 統計の作成を目的として、個人や法人等に事実の報告を求める調査。
基幹統計調査: 基幹統計を作成するための統計調査。
一般統計調査: 行政機関が行う統計調査のうち、基幹統計調査以外のもの。
事業所母集団データベース: 事業所に関する情報を電子的に検索できるように体系化したもの。
統計基準: 公的統計の統一性や総合性を確保するための技術的な基準。
行政記録情報: 行政機関の職員が職務上作成・取得した情報で、組織的に利用されるもの。
調査票情報: 統計調査で集めた情報のうち、文書や電磁的記録に記録されたもの。
匿名データ: 調査票情報を、個人や法人を特定できないように加工したもの。

統計法の構成

統計法は、以下の章で構成されています。

第一章：総則
第二章：公的統計の作成
第三章：調査票情報等の利用及び提供
第四章：調査票情報等の保護
第五章：統計委員会
第六章：雑則
第七章：罰則

基本計画

公的統計の体系的かつ効率的な整備のため、おおむね5年間の具体的な取り組みを定めた基本計画が作成されます。この計画は、統計委員会の審議やパブリックコメントを経て閣議決定されます。

基幹統計と基幹統計調査

基幹統計は、国の政策立案や国民生活に重要な統計として総務大臣が指定します。国勢統計や国民経済計算などがこれにあたります。基幹統計を作成するために行われるのが基幹統計調査です。

二次利用

公的統計の利用を促進するため、調査情報の二次利用に関する規定が設けられています。具体的には、匿名データの作成と利用、オーダーメイド集計、個人を特定できる可能性のある調査票情報の提供の3つの手続きがあります。

情報の保護

統計調査で収集された情報は、個人情報保護法の適用対象外ですが、統計法に基づき厳重に保護されます。情報を扱う機関や職員には、情報の適切な管理と秘密漏洩の防止が義務付けられています。

統計委員会

総務省に置かれる統計委員会は、統計制度の改善や基本計画の策定、基幹統計の指定などについて調査審議し、総務大臣に意見を述べます。委員は学識経験者から選ばれ、非常勤で活動します。

罰則

統計調査に関する不正行為や秘密漏洩、統計データの捏造などに対しては、懲役刑を含む罰則が規定されています。

参考資料

[総務省]]統計局: [統計法について
e-Gov法令[検索]]: [統計法
政府[統計]]の総合窓口 (e-Stat): [ミクロデータ利用ポータルサイト
[総務省]]: [公的統計の整備に関する基本的な計画

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