絵画石碑

絵画石碑（Picture Stone）とは

絵画石碑とは、ゲルマン鉄器時代やヴァイキング時代のスカンディナヴィア、特にゴットランド島で多く見られる装飾が施された石板のことです。石灰岩を材料とし、2023年時点で400基以上が確認されています。これらは記念碑として建立されたと考えられていますが、墓地の近くに建てられたものも存在します。道や橋のそばなど、人目に付きやすい場所に置かれていました。

ルーン石碑とは異なり、絵画石碑は絵画によって事象が描かれています。ルーン碑文を伴うこともありますが、捧げられた人物が刻まれることは稀です。そのため、絵画石碑の正確な解釈は困難とされています。

概要

絵画石碑は、スウェーデンの西海岸地帯に見られる青銅器時代の岩石線画とは異なり、石灰岩を加工して作られています。何らかの記念として建立されたと考えられ、死者崇拝や埋葬習慣に起源を持つと推測されています。

石碑が建立当時の場所で発見されることは稀で、キリスト教伝来後に墓石や教会の石材として再利用される形で発見されています。

グループ分け

絵画石碑は、形状と装飾の研究に基づき、以下の3つのグループに分類されます。

第1グループ：紀元400年～600年

まっすぐな形状で、上面が斧の刃のような形をしています。渦巻模様を伴う円（太陽を象徴）が主な装飾です。船、人間、動物が描かれたものもあります。これらの石碑は墓地の近くに建てられることが多いですが、墓の上に置かれることはありません。

第2グループ：紀元500年～700年

様式的な文様が施された小さな石碑で、「こびと絵画石碑」とも呼ばれます。図式化された小舟や船、鳥、角のある動物などが描かれています。両面に装飾が施されている点が特徴で、縁飾りの文様はジグザグ状です。

第3グループ：紀元700年～1100年

背が高く、弓なりに長い両側面を持つ、キノコ型の石碑が含まれます。格子模様の帆を張った船や、異なる場所での出来事などの絵が多数見られます。石碑の周囲は編み目文様で飾られています。供犠や戦いの場面、馬に乗った男性が角杯を掲げた女性に出迎えられる絵がよく見られます。北欧神話や伝説の場面を描いたものもありますが、背景となった物語は文書として現存していません。

絵画石碑は、船や帆、武器、馬車、橇についての考古学的な知識を補完する情報源です。このグループの後期には、ルーン文字で装飾されたものや、竜などの動物文様、キリスト教の影響を受けた十字架が刻まれたものがあります。これらは道や橋の近くなど、よく見える場所に置かれました。

ゴトランド島最大の絵画石碑は、ブトレ教区内のエンゲで発見された高さ3.7メートルの石碑で、8世紀の様式で装飾されています。

マン島の絵画石碑

マン島の背の高い十字架の墓石には、ゴットランド島の絵画石碑と類似した戦士や北欧の神々を題材とする装飾が多く見られます。

絵画石碑は、古代スカンディナビアの文化、信仰、社会構造を理解するための重要な手がかりとなります。これらの石碑に描かれた絵は、当時の人々の生活、神話、世界観を反映しており、歴史家や考古学者にとって貴重な研究対象となっています。

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