絵画芸術論

『絵画芸術論』（原題: Arte de la Pintura）は、17世紀スペインの画家であり美術理論家であったフランシスコ・パチェーコによって著された美術書です。1638年に『絵画論:その古代性と偉大』として完成しましたが、パチェーコの没後、1649年に出版されました。本書は、当時の美術界における重要な議論や価値観を反映しており、特にミケランジェロの芸術を高く評価する一方で、宗教的な観点からは保守的な立場を明確に示しています。

本書の内容は、単なる技術論にとどまらず、美の本質や芸術の意義といった深いテーマにも触れています。パチェーコは、ラファエロ・サンティがバルダッサーレ・カスティリオーネに宛てた手紙を引用し、美の追求が芸術に不可欠であることを強調しました。この引用は、当時の美学的な議論に影響を与え、後世の芸術家や理論家にも影響を与えました。

初版の出版以降、本書は何度も再版され、スペイン美術史研究において不可欠な資料としての地位を確立しました。また、スペイン人画家が著した最初の芸術書としても知られており、その歴史的な意義は非常に大きいと言えます。

書誌情報としては、以下の版が確認されています。

初版 (1649年): 『Arte de la pintura, su antigüedad y su grandeza』としてセビリアで出版されました。
第2版 (1866年): 『Arte de la Pintura su antigüedad y grandezas』としてマドリードで再版されました。
* 1871年版: 『Arte de la pintura, su antigüedad, y grandezas』としてマドリードで出版され、内容は、絵画における人物描写、色彩、テンペラ画や油絵の技法、照明、金箔、フレスコ画、神聖な絵画の描き方などに触れています。この版はPDF形式でも公開されています。


これらの情報からもわかるように、『絵画芸術論』は、単なる美術の理論書ではなく、当時の文化や思想を反映した重要な歴史的資料です。美術史研究者にとっては、必読の文献であると言えるでしょう。また、本書は、美の本質や芸術の役割について深く考えるためのきっかけを与えてくれます。参考文献として、松原典子氏の論文「対抗宗教改革期のスペインにおける説教と美術」も挙げられます。この論文は、当時の美術と宗教の関係性について考察しており、『絵画芸術論』を理解する上で参考になるでしょう。

外部リンクとして、Youblisher.com（スペイン語）で本書の一部を閲覧できるほか、Google Booksのリンクからも本書の一部を確認することができます。

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