絶滅の島

絶滅の島

藤子不二雄（藤本弘）による読切漫画作品『絶滅の島』は、人類が宇宙怪物によって絶滅の危機に瀕する物語です。発表形態によって内容が異なり、複数のバージョンが存在します。

概要

本作は、宇宙怪物の侵略を通して、人類がこれまで行ってきた大量殺戮や環境破壊に対する痛烈な批判が込められています。藤本弘の作品の中でも、特に残酷な描写が多いことで知られています。

作者自身も、本作を「みどりの守り神」と対になる実験的な作品と位置づけています。

初期のサイレント版では台詞がなく、宇宙怪物の言語に字幕が付けられていました。単行本版では地球人側の視点が強調され、地球人の台詞が追加されています。しかし、宇宙怪物の言語とその翻訳は、単行本版でも健在です。

あらすじ

アンデス山中に突如出現したUFOの大群は、瞬く間に地球を制圧。人類は絶滅寸前の状態に追い込まれます。秘島ツアーに参加していたシンイチとカオリら27人は、離島にいたことで難を逃れますが、2年後、その島にも宇宙怪物が襲来し、人間狩りが始まります。

宇宙怪物の攻撃から逃れたシンイチは、カオリを森に隠し、村の様子を見に行きますが、村人は皆殺しにされていました。カオリも連れ去られてしまい、シンイチは生き残った中年男性と共に救出に向かいます。

夜、焚火を囲みながら、男性はかつて島に生息していたミツユビムカシヤモリが、人間の乱獲によって絶滅したことを語ります。そして、欲望のままに動物を狩ってきた人類が、今度は狩られる立場になったとしても、それは当然の報いではないかと問いかけます。

村にたどり着いた2人は、串刺しにされ、燻製にされた人間の死体を目撃します。カオリを探すと、彼女は木に吊るされていました。男性が縄を切ってカオリを助けた直後、宇宙怪物たちが襲いかかります。男性は2人を逃がすために怪物に突撃し、命を落とします。カオリは再び捕らえられ、シンイチも触手に貫かれ、気絶してしまいます。

そこに別の宇宙船が現れ、中から現れた宇宙怪物（巡視官）は、シンイチの怪我を治療し、彼らに向かって何かを語りかけます。最後に、宇宙怪物の言葉の翻訳が示されます。襲ってきた怪物たちは密猟者であり、チキュウケナシザルの黒焼きが円形脱毛症に効くという迷信を信じて密猟を行っていたのです。巡視官は「あやうく絶滅させるところだった」「ぼくたち宇宙人、みんな友達」とつぶやき、去っていくのでした。

各バージョン

1978年版： 扉絵のみが存在し、少年が竹槍を持つ姿が描かれています。
サイレント版： 台詞や効果音が一切なく、フィルムのようなデザインが特徴です。訳文には「イマヤノジフ病」という病名が登場し、「宇宙の生物みな兄弟」というパロディが使用されています。
OVA： 「藤子・F・不二雄 Sukoshi Fushigi 短編シアター」第4巻に収録。出崎哲が監督を務めました。
テレビアニメ版： 「週刊ストーリーランド」で放送。残酷な描写がカットされ、エンディングも変更されています。

作中のパロディ

「ぼくたち宇宙人、みんな友達」という言葉は、「グリーンドラえもん みんなともだちキャンペーン」のキャッチフレーズ「ぼくたち地球人 みんなともだち」のパロディです。

登場人物

シンイチ： 宇宙怪物の襲来を生き延びた少年。
カオリ： 同じく生き残った少女。
男： シンイチと行動を共にする男性。ミツユビムカシヤモリの話をします。
宇宙怪物： 地球人を襲う怪物と、密猟を取り締まる巡視官が登場します。

『絶滅の島』は、SF的な設定を通して、人間の業や環境問題、そして異質なものとの共存の難しさを描いた、藤子不二雄の異色作と言えるでしょう。

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