綜合原爆展

綜合原爆展とは

綜合原爆展（そうごうげんばくてん）は、日本で初めてとなる原爆に関する本格的な展覧会として、1951年に京都大学の同学会の主催によって開催されました。この展覧会は、「京大原爆展」とも呼ばれ、多くの学生たちの協力によって実現しました。

開催の背景

1951年5月に開催された「わだつみの声にこたえる全学文化祭」で、京都大学の医学部と理学部の学生自治会が原爆をテーマにした展示を行いました。この展示がきっかけとなり、さらに大規模で総合的な原爆に関する展覧会を実施しようという機運が高まりました。そこで、同年7月14日に、京都駅前にある丸物百貨店で「綜合原爆展」を開催することが決定されました。

数百人のボランティア学生の助けを借りて、展覧会は10日間にわたって行われました。展示内容は、医学部や理学部に限らず、法学部、工学部、農学部、文学部などさまざまな学部の学生が関与し、原爆のメカニズムや人間、作物への影響、原爆投下をめぐる政治情勢、文学作品といった多様なテーマが盛り込まれました。特に、丸木位里・俊夫妻による共同作品「原爆の図」は全5部作が展示され、第5部である「少年少女」はこの展覧会が初公開となりました。

展覧会の影響

この展覧会は約数万人の来場者を集め、音声的にも視覚的にも強い印象を与えました。会期が終了した後も、展示に使用されたパネルを他の都市で貸し出し、ミニ原爆展が各地で開催され、大いに賑わいを見せました。

その後、同学会は11月に学校内での再度の開催を計画しましたが、昭和天皇の来学と重なっていたために大学側からの許可が下りず、結局その企画は実現しませんでした。また、展示に関する記録や資料は時が経つにつれて忘れ去られがちでしたが、2015年に医師である川合一良が約2700点の資料を京大大学文書館に寄贈し、展覧会の歴史が再評価されるきっかけが生まれました。これらの資料は、展示に関する記録や当時の新聞記事、各地で行われていた関連イベントの情報が含まれています。

展覧会の意義

この原爆展は、連合国による占領下での開催であったにも関わらず、広島や長崎の原爆被害を多くの一般市民に伝える重要な役割を果たしました。実際に、「アサヒグラフ」の原爆特集号が刊行されるのはこの展覧会の後のことでした。川合一良によると、綜合原爆展やその後のミニ原爆展は、日本における平和運動の基礎を築いた一因であるとも言われています。

主催団体である同学会は平和賞を受賞し、その記念として発行された小冊子『平和は求めて追うべし』には著名な学者たちの寄稿が含まれています。この展覧会は、1959年以降毎年開催される京都大学の「11月祭」の根源とも言われています。

メディアでの紹介

最近では、2023年8月に放送された「歴史探偵」において、原爆展の実現に尽力した学生や教員の物語が取り上げられ、改めてその意義が強調されました。

このように綜合原爆展は、単なる歴史的な出来事に留まらず、今日の社会における平和の重要性を再確認するための貴重な資源となっています。

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