綱切橋

綱切橋（つなきりばし）

綱切橋は、長野県飯山市の千曲川に架かる、長野県道38号飯山野沢温泉線に属する橋長304メートルの橋です。飯山市街地と千曲川の対岸に位置する安田地区を結び、地域住民の生活を支える重要な役割を果たしています。

概要

綱切橋は、2径間+3径間の連続変断面RC床版鋼箱桁橋という形式を採用しています。橋の全長は304メートル、幅員は9.75メートルで、うち車道が7.25メートル、歩道が片側2.5メートルとなっています。この橋は、川崎重工業、松尾橋梁、三井造船、宮地鐵工所によって施工され、架設工法には自走クレーンとベント工法が用いられました。

歴史

綱切橋の名称は、古くからこの地に存在した「安田の渡し」に由来します。この渡しは、両岸に綱をかけ、それを手繰り寄せて川を渡るというものでした。特に有名なのは、第4次川中島の戦いにおいて、上杉謙信が越後に退却する際、追撃を逃れるためにこの渡しで綱を切ったという伝説です。この故事から、「綱切の渡し」とも呼ばれ、現在の橋名にその名を残しています。

1873年（明治6年）には、飯山町の有志5名が発起人となり、渡しの約20メートル上流に有料の船橋である「上船橋」が架けられました。この橋の開通により、川西の善光寺街道に代わって、安田、赤岩を経由し、立ヶ花、豊野、長野方面への交通が活発化しました。しかし、度重なる水害により経営難に陥り、下水内郡会が経営を引き継ぎました。その後、1910年（明治43年）に県に移管され、舟橋と木橋の混合橋に改装され、「安田橋」と名を変えました。

昭和の不況下、国の救農土木事業の一環として、安田橋の架け替え計画が持ち上がりました。1934年（昭和9年）に着工し、1935年（昭和10年）8月9日に総工費24万937円を費やして新しい橋が開通しました。この時、支間長70メートル、橋長283.6メートル、幅員5.5メートルの単純ワーレントラス橋4連に架け替えられ、橋の名前も「綱切橋」と改められました。

しかし、旧橋は幅員が狭く、河川改修の支障となることから、1980年（昭和55年）に新たな架橋計画が策定されました。1986年度（昭和61年度）に着工し、1990年（平成2年）7月に旧橋の上流側約80メートルに新しい橋が完成しました。旧橋は翌1991年（平成3年）に撤去され、旧橋の親柱にあった橋銘板と設計図の4枚は、県から飯山市教育委員会に寄贈されました。新橋の完成に伴い、歩行者を風雪から守る役割は、従来のよしず張りから化学繊維のネットへと引き継がれました。

現在の綱切橋は、地域住民の交通を支えるだけでなく、歴史的な背景を持つ橋として、その名を受け継いでいます。

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