緊急交通路

緊急交通路について

緊急交通路とは、災害発生時に、被災地の救援・復旧活動を円滑に進めるために、一般車両の通行を禁止または制限する道路のことです。これは、災害対策基本法第76条第1項に基づき、各都道府県の公安委員会が道路と区間を指定して実施されます。

通行可能な車両

緊急交通路を通行できるのは、以下の車両に限られます。

緊急車両: 救急車、消防車、警察車両などの緊急自動車。
災害応急対策車両: 災害対策基本法第50条に定められた災害応急対策を実施する車両で、都道府県公安委員会が発行する標章と証明書を所持しているもの。

災害応急対策には、警報の発令、避難の勧告・指示、消防・水防活動、救難・救助活動、応急復旧、犯罪予防、緊急輸送の確保などが含まれます。これらの活動は、指定行政機関や指定公共機関が責任を負います。

東日本大震災の際には、燃料不足が発生したため、特例としてタンクローリー車にも通行許可証が交付されました。

過去の実施例

緊急交通路は、過去の大きな災害時に実際に実施されています。以下にその例を挙げます。

阪神・淡路大震災（1995年）

1995年1月17日：兵庫県南部地震（阪神・淡路大震災）が発生。
1月19日：国道2号が緊急交通路に指定。
1月22日：国道2号や神戸市道（東西軸）などが追加指定。
1996年8月10日：緊急交通路の指定が全面解除。

東日本大震災（2011年）

2011年3月11日：東北地方太平洋沖地震（東日本大震災）が発生。
3月12日：東北自動車道、常磐自動車道、磐越自動車道などの高速道路が緊急交通路に指定。
3月16日：常磐自動車道の一部区間の指定が解除。
3月24日：緊急交通路の指定が全面解除。

この期間中、政府による緊急物資輸送（食料、生活用品、燃料、医薬品など）のために、約16万6000件の通行許可証が発行されました。

現在の状況

東日本大震災の教訓を踏まえ、警視庁は緊急交通路を事前に指定し、公表するようになりました。また、警察庁は南海トラフ地震の発生を想定し、134路線、31都道府県、総延長6117キロメートルの緊急交通路を指定する計画を発表しています。

緊急交通路の重要性

緊急交通路は、災害時に人命救助や物資輸送を迅速に行うための重要な手段です。適切な運用により、被災地の復旧・復興活動を円滑に進めることが可能になります。そのため、日頃から緊急交通路について理解を深め、災害発生時には冷静な行動が求められます。

関連情報

緊急輸送道路: 緊急交通路と似た概念ですが、こちらは災害時の輸送を優先するための道路を指します。
国土交通省: 道路行政を担当する省庁で、緊急輸送道路などにも関わっています。
警察庁: 緊急交通路の指定や運用を管轄する行政機関です。

外部リンク

警視庁
* 警察庁

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