緊急輸入制限

緊急輸入制限について

緊急輸入制限は、国内産業に深刻な影響を及ぼす恐れのある輸入品目に対して、国が課す制限を指します。これはしばしば「セーフガード」と呼ばれ、輸入品の急増による国内市場への悪影響を緩和するために用いられます。

国際的な背景

国際的には、1986年から1994年にかけてのウルグアイラウンドで合意された内容を受けて、1995年に制定された世界貿易機関（WTO）設立協定内で、緊急輸入制限の規則が明確に定められています。特に、WTOの附属書1Aに記載されている物品の貿易に関する多角的協定、いわゆる「セーフガード協定」がベースとなっています。

日本においては、この制度は国内法にも根付いており、関税に関しては「緊急関税」として関税定率法第9条に、数量制限については外国為替及び外国貿易法に基づき規定されています。日本では、これとは別に「特別セーフガード」にも注意を払う必要があります。

特別セーフガードと一般セーフガード

ウルグアイラウンド交渉の結果は、関税以外の全ての国境措置の関税化を推進しましたが、農業関連の協定において特別セーフガードが設けられています。この特例は、数量ベースまたは価格ベースで判断され、要件を満たせば自動的に適用されるため、発動のために複雑な調査手続きは不要です。

例えば、2019年度には数品目に対し適用され、2020年度でも別の数品目が対象となっています。具体的には、価格ベースの特別セーフガードは年に約10件適用されるようです。

日本特有の制度

日本には、牛肉および豚肉に関する独自の制度も存在します。この制度は、ウルグアイ・ラウンド合意の際に関係国と合意した内容に基づき、輸入量の急増に対する安全弁として機能します。一定の数量を超えると、協定税率よりも低い輸入関税が再設定されますが、この制度は、2020年の関税改正により廃止されました。

各国の取り組み

アメリカ合衆国でもセーフガードに関する法律が整えられ、1974年通商法により策定されています。ここでは、アメリカ国際貿易委員会が調査と決定を行います。

例えば、アメリカは2002年に鉄鋼製品に対して、2009年には中国からの自動車やトラック用タイヤに対しセーフガードを適用しました。また、日本に対しては、2001年の畳表や生しいたけ、ネギに対して緊急関税が適用されましたが、その後暫定的な緊急関税が解除されました。

ベトナムでも類似の事例があり、中国からの鉄鋼製品に対してセーフガードが発動されました。この時、日本政府は発動要件の適正性を指摘し、是正を求める事態となりました。

まとめ

緊急輸入制限は、国内産業を保護し、海外からの輸入品が著しく増加することによる影響を和らげるための重要な措置です。その背景には、国際条約や国内法があり、特に農業に関する特別な取り決めも存在します。各国のセーフガード措置とその対応は、国際貿易の複雑な側面を示しており、今後もその運用は注視されるべきです。

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