緊急離着陸場

緊急離着陸場とは

緊急離着陸場（Emergency Helicopter Landing Facilities）は、主に消防活動のために高層ビルの屋上に設けられるヘリコプターの離着陸場です。この施設は、緊急時の人命救助や消火活動を迅速に行うことを目的としています。消防用ヘリコプターがここに着陸し、救助や消火を行うことから、緊急用離着陸施設とも呼ばれることがあります。

歴史的背景

1990年代に連邦航空局（FAA）が発表した報告書により、アメリカでは高層ビルにおける緊急離着陸場の重要性が認識されました。この報告書では、ヘリコプターがビル火災時において人命救助に有効であり、事前に設置があれば更に救助活動が効率的に行えるとされています。この結果、ロサンゼルスやサンディエゴなどは、条例で高層ビルに緊急離着陸場の設置を義務付けるようになりました。

日本国内においては、1988年にロサンゼルスの高層ビルでの大規模火災がきっかけとなり、ヘリコプターの屋上緊急離着陸場の設置が推進されました。1990年には、日本の建設省や消防庁からの通達により、高層建築物への設置が指導され、以降急速に普及が進みました。特に、高さ31mを超える建物における設置が求められるようになりました。

設置基準と構造

緊急離着陸場は、通常の場合、実際にヘリコプターが着陸することがありません。そのため、公共のヘリポートに比べて構造が簡易なものとなっています。また、航空法におけるヘリポートとは異なり、消防のためのみに使用されるため、他の事業では利用されません。日本では2022年に東京消防庁が設置基準を見直し、社会的なニーズの変化に応じた改定を行いました。

さらに、緊急救助用スペースと呼ばれる別の施設も存在しますが、こちらではヘリコプターが着陸することはできず、ホバリングにより救助活動が行われます。これらの施設は、航空関係者の間で、緊急離着陸場は「Hマーク」により、救助用スペースは「Rマーク」として区別されています。

大きさと周囲の配慮

一般的に、緊急離着陸場の面積は20m×20mですが、各自治体により異なる場合があります。たとえば、東京消防庁では特定の機体によってサイズが変わることがあるため、場合によっては24m×24mの着陸帯も設けられます。着陸帯の周囲には、救助隊員や要救助者が転落しないように設計された障壁が必要です。各自治体ごとにその設置基準が異なり、例えば東京では1.5mの幅が求められていますが、名古屋市では2.0m以上の幅が必要とされています。

マーキングと注意点

着陸場には、黄色の線で着陸帯の形が示され、その中央には「H」のマークが描かれます。これは、緊急時にヘリコプターが安全に着陸できるよう、視認性を高めるための工夫です。

緊急離着陸場は、災害時の人命救助に役立つ重要なインフラとして、今後もその設置が進められることでしょう。

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