総力戦演説

総力戦演説の概要と背景

1943年2月18日、ナチス・ドイツの宣伝相ジョセフ・ゲッベルスはベルリンのスポーツ宮殿で重要な演説を行い、この演説は「総力戦演説」として知られています。この演説は、第二次世界大戦におけるドイツの状況が、ますます厳しくなっていることを背景に、国民に対して戦争継続の必要性を訴えかけるものでした。

この年の初め、ドイツ軍はスターリングラードでの敗北を経て国際的な立場が揺らいでいました。また、アメリカとイギリスのリーダーによる無条件降伏の要求があったことや、ソ連連邦が西方に勢力を拡大する中、ドイツの軍事状況は危機的でした。

このような背景の中で、ゲッベルスは自ら演説を行うことになりました。当初はアドルフ・ヒトラーが予定していたものの、彼が拒否したため、演説はゲッベルスの手に委ねられました。

演説の内容とその意義

演説の中でゲッベルスは、ドイツが直面する脅威を「ボルシェビキ」に喩え、ドイツ軍が東部戦線で敗退すれば、「ヨーロッパ全体」にその脅威が及ぶと警告しました。
それを阻止できるのはドイツ人と枢軸国だけであるとも主張し、危機感を高め、国民に戦争を続ける覚悟を促しました。

彼はまた、歴史的な重みを強調し、「2000年のヨーロッパの歴史が危機に瀕している」と訴えることで、聴衆の感情を引きつけました。そして、戦争に対する緊縮政策の正当性を訴えつつ、聴衆を鼓舞する発言を繰り返しました。

演説の締めくくりには、詩人テオドール・ケルナーの言葉にインスパイアされた「さあ国民よ起て！そして嵐よ起きよ！」という力強い呼びかけで結びました。このフレーズは、戦争に対する決意を表明し、演説を聞いた国民の士気を高めることに寄与しました。

舞台裏とその影響

演説が行われたスポーツ宮殿の舞台には、大きなナチスの旗が掲げられ、観衆は熱心なナチズムの信奉者たちで構成されていました。ゲッベルスは、観客の選定においても慎重な配慮を行い、ナチスに対する忠誠心を受け入れる人々を集めました。この演説は広くラジオを通じて放送され、後にドイツ全土に影響を与えることとなります。

演説の結果、ドイツの市民は戦争継続を受け入れることとなり、ナチス政権は「総力戦」という非常時の政策へと舵を切ることが可能になりました。当時の政治的、社会的な状況を受け、国民に対して戦争継続を支持させる上で、この演説は重要な役割を果たしました。

1943年2月18日という日付は、ただの演説の日ではなく、ドイツが運命を決する選択をする上での重要な節目であったことを示しています。ゲッベルスは国民を鼓舞する一方、戦争に対する市民の疑念や懸念を払拭し、ナチスの意向に従わせるために努めたのです。

総力戦演説は、ゲッベルスの巧妙な言葉使いや心理的手法を示す事例でもあり、ナチスがどのようにして人々を巻き込み、苛烈な戦争を続けようとしたかを理解するための重要な文献であると言えます。

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