総合人間学会

総合人間学会の概要

総合人間学会（そうごうにんげんがっかい、英名: Japan Association of Synthetic Anthropology）は、「人間とは何か」という根源的な問いを探究するため、学問分野を横断する総合的な視点から人間存在を研究し、その成果を社会に広く共有することを目指して活動する日本の学術団体です。憲法学者の小林直樹氏らが中心となり、2006年に創設されました。その前身は、2002年に既に活動を開始していた「総合人間学研究会」に遡ります。

この学会は、特定の専門分野に閉じることなく、人文科学、社会科学、自然科学といった従来の学術の垣根を越えた、学際的なアプローチによる「総合人間学」の確立を目指しています。その目的は、人間存在の多面性を深く理解し、現代社会が直面する様々な課題に対する新たな洞察を提供することにあります。

主な活動内容

学会の活動は多岐にわたります。毎年一度、全国規模の研究大会を開催し、最新の研究成果が発表され、活発な議論が交わされる場となっています。また、学術誌として『総合人間学』を定期的に発行しています。この学会誌は、専門的な研究論文だけでなく、人間や人間を取り巻く諸問題に関する多様な視点からの考察や議論を収録しており、学会員だけでなく広く一般市民にも人間学への関心を深めてもらうことを意図して市販もされています。

さらに、会員間の情報交換や交流を促進するため、地域別の談話会も開催されています。関東地区では年に数回、関西地区でも年に一度以上の頻度で開催され、小規模ながらも密度の高い議論が行われています。ニュースレターの発行を通じて、学会の最新情報や活動状況が会員に届けられます。若手研究者の育成や特定のテーマに関する議論を深めるための各種部会も設けられており、多様なニーズに応じた活動が展開されています。国内外の関連学会や研究機関、団体との連携・協力も積極的に行い、人間学研究のネットワーク拡大に努めています。

「開かれた学の場」という理念

総合人間学会の大きな特徴の一つは、「開かれた学の場」としての姿勢です。特定の学問分野の専門家だけでなく、教育関係者、医療従事者、企業人、学生、そして人間や社会に関心を持つ一般市民に至るまで、あらゆる立場や背景を持つ人々の参加を歓迎しています。研究者と市民が等しく学び、語り合うことで、従来の学術の枠を超えた豊かな発想や新たな問いが生まれることを期待しています。このような開かれた姿勢は、複雑化する現代社会における人間理解のために不可欠であると考えられています。

主要な刊行物

これまでに、学会の目的を体現する重要な書籍がいくつか刊行されています。たとえば、学会設立初期である2006年には、小林直樹氏が編纂した『総合人間学の試み – 新しい人間学に向けて』が出版され、学会の目指す方向性が示されました。同年には、小原秀雄氏編による『生命・生活から人間を考える』、柴田義松氏編による『現代の教育危機と総合人間学』も刊行されており、生命倫理や教育問題など、多様な切り口から人間学へのアプローチが試みられています。これらの書籍は、学会の主要な研究成果を広く伝える役割を果たしています。

組織

学会の運営に関わる事務局は、現在、東京農工大学農学部環境哲学研究室に置かれています。ここを拠点として、学会の様々な事業が円滑に進められています。

関連情報

総合人間学会は、「人間」という普遍的かつ深遠なテーマに対し、多角的な視点からアプローチし続けることで、学術の発展に貢献するとともに、現代社会における人間理解の深化に寄与しています。その活動は、人間学、人間科学といった関連分野の研究者だけでなく、人間存在に関心を持つ全ての人々にとって重要な示唆を与えるものです。より詳細な情報や活動については、学会の公式ウェブサイトを参照することができます。

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