総督レオナルド・ロレダンの肖像

ジョヴァンニ・ベッリーニによる『総督レオナルド・ロレダンの肖像』は、16世紀初頭のヴェネツィアの権威と威厳を象徴する傑作です。1501年から1502年頃に制作されたこの肖像画は、1501年から1521年までヴェネツィアの総督（ドージェ）を務めたレオナルド・ロレダンを描いています。

総督は、華やかなボタンがあしらわれた公式の国家服を身に着けており、その姿は厳粛かつ威厳に満ちています。特徴的な角型の帽子は、ダブレットのフードから派生したもので、リネンのキャップの上にかぶられています。この肖像画は、古代ローマ時代の彫刻における胸像の構図を彷彿とさせ、フランドル絵画の四分の三正面向きの肖像画の影響も受けていると考えられています。

ジョン・ポープ・ヘネシーは、ベッリーニを「15世紀で最も偉大な公式の肖像画家」と評し、彼の作品が、個人の描写を損なうことなく、理想化を通じて公式な人物像を確立する能力を高く評価しています。この肖像画は、ベッリーニの卓越した技術と、対象の内面と外面の両方を捉える彼の才能を証明しています。

絵画の来歴を辿ると、当初はヴェネツィアに所蔵されていたものの、ナポレオンによる都市征服の際に略奪された可能性が高いと考えられています。その後、1807年にウィリアム・トーマス・ベックフォードが13ギニーで購入し、1844年にナショナル・ギャラリーに630ポンド（2019年換算で約63,471ポンド）で売却され、現在に至っています。

この作品は、単なる肖像画を超え、ヴェネツィア共和国の歴史と文化、そしてルネサンス期における芸術の隆盛を物語る重要な歴史的、芸術的遺産としての価値を持っています。

作品の左下隅には、小さな紙（cartellino）に「IOANNES BELLINVS」と署名されており、ベッリーニ自身の筆によるものであることが示されています。

この絵画は現在、ロンドンのナショナル・ギャラリーに展示されており、訪れる人々は、その卓越した描写力と歴史的意義を目の当たりにすることができます。

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