総統官房

総統官房の歴史と機能

総統官房（そうとうかんぼう、独: Kanzlei des Führers der NSDAP、略称：Kdf）は、ナチス・ドイツの国家社会主義ドイツ労働者党（ナチ党）の重要な機関で、アドルフ・ヒトラーの直属の機関でした。この組織は主にヒトラー宛の嘆願書や恩赦の申請を管理し、後に命名されたT4作戦の実施にも関与していました。

設立の背景

総統官房は1933年の党大会において設立を決議され、ヒトラーの指導的役割を強調するための機関として創られました。この組織は以下の三つの機関と同様、国家の運営において重要な位置を占めていました。

• - オットー・マイスナーのベルリン大統領府
• - ハンス・ハインリヒ・ラマースの首相官邸
• - マルティン・ボルマンのミュンヘン党本部

フィリップ・ボウラーが1934年11月に総統官房長に就任し、初めはベルリンのLützowuferに本部を置いていましたが、やがて総統官邸の裏にあるフォスシュトラーセ4番地へ移転しました。1939年には約4,200人の職員が在籍していたとされています。

主な業務

この官房が担った主な業務には、以下のようなものがあります。

1. 救済措置の申請: 1938年以降、総統官房は党員の恩赦申請に関する発言権を持つようになりましたが、司法当局からは独立した決定を下すことはできませんでした。
2. 経済的申請の管理: 外貨や経済援助に関連する利権の許可など、経済的な申請に関しても担当していました。
3. 婚姻禁止の免除施策: ヌルンベルク法に基づく婚姻禁止の免除や、特定の法律による強制不妊手術の申請をも管理しました。

T4作戦は、この三番目の業務から派生した事業であり、1939年に開始されました。この計画は、精神障害者や子どもたちを対象とした安楽死制度を構築し、以降の大量殺戮へと繋がりました。ボウラーはこの計画を隠すため、SSのヴィクトール・ブラックに管理を任せ、偽装組織である「特定患者輸送の為の非営利団体」を設立しました。

組織構造

総統官房は五つの主要部署に分かれ、特に第Ⅱ局は特別な任務を負っていました。具体的な役職は以下の通りです。

• - 総統官房長: フィリップ・ボウラー
• - 第Ⅰ局: 個人官房部 - アルベルト・ボルマン
• - 第Ⅱ局: 国家及び党問題 - ヴィクトール・ブラック
• - 第Ⅲ局: 官邸政務担当 - ヒューベルト・ベルケンカンプ
• - 第Ⅳ局: 社会経済問題 - ハインリヒ・クニリム
• - 第Ⅴ局: 内務及び人事 - ヘルベルト・イェンシュ

このように、各局が特定の問題に対処する形で組織が運営されていました。

戦時中の変化

第二次世界大戦が進行していく中で、総統官房はその役割を次第に失いつつありました。1942年以降、職員の数は137人にまで減少し、恩赦要求の最終的な判断はボルマンの党官房によって行われるようになりました。ボウラー自身は積極的に決定を下すことを避けており、占領地の管理を模索していたとされています。

T4作戦は1941年8月に公式に廃止されましたが、その職員は東部戦線への異動を強いられ、多くはユダヤ人の抹殺に関与しました。最終的に、1945年には連合国による管理理事会法により総統官房は禁止され、その資産は没収されることとなりました。

この歴史は、ナチス・ドイツの政治的背景を理解する上で重要な要素となっています。

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