総角 (源氏物語)

総角（あげまき）

『源氏物語』五十四帖「総角」は、宇治十帖の第三帖にあたり、物語全体のクライマックスを担う重要な巻です。巻名は、主人公の薫が、八の宮の一周忌法要の際に大君へ詠んだ和歌に由来します。この和歌には、長く続く関係を願う薫の切実な想いが込められています。

あらすじ

物語は、薫二十四歳の秋、八の宮の一周忌法要から始まります。薫は法要の準備に奔走し、その夜、大君への想いを告白しますが、拒絶されます。大君は、父である宮の遺志を継ぎ、宇治の領地を治めるため、生涯独身を貫く決意を固めていたのです。しかし、同時に、妹の中君を薫に嫁がせようと考えていました。

大君の衣には薫の香りが染み付いており、そのことから中君は二人の関係を疑い始めます。間もなく、薫は大君の寝所へ忍び込みますが、大君は中君を残して隠れてしまいます。結果的に、薫と中君は語り合うことになります。

薫は、大君の意思を知った上で、中君を匂宮と結婚させようと画策します。ある夜、密かに匂宮を宇治へ案内し、中君との出会いを演出します。そして、大君に結婚を迫りますが、大君はそれを拒否します。匂宮は中君のもとに通い続けますが、母である明石の中宮の反対にあい、思うように宇治へ行くことができなくなります。

その後、匂宮は中君との逢瀬を計画しますが、盛大になりすぎて失敗に終わります。さらに、父帝は匂宮の遠出を禁じるため、夕霧の六の君との結婚を決定します。この知らせを聞いた大君は、心労から病に倒れ、薫の看病も虚しく亡くなってしまいます。大君の死は、薫にとって計り知れない悲しみをもたらしました。

大君の死後、薫は深い悲しみに暮れ、宇治に籠って喪に服します。薫の深い悲しみは明石の中宮にも伝わり、彼女は匂宮と中君の結婚を許す決断をします。そして、匂宮は中君を京の二条院へ迎え入れることを決意するのです。

総角のテーマ

「総角」は、叶わぬ恋、そして運命の残酷さを描いた物語です。薫と大君の悲恋は、物語全体の重要なテーマであり、同時に、中君と匂宮の恋の行方にも影響を与えています。登場人物たちの複雑な感情、そして彼らの運命が複雑に絡み合う様子は、読者に深い感動を与えます。宇治の物語全体を理解する上で欠かせない、重要な巻と言えるでしょう。

参考文献

渋谷栄一による定家本の本文・現代語訳
『源氏物語　49 総角』：新字新仮名 - 青空文庫（与謝野晶子訳）

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