総髪

総髪（そうはつ）とは

総髪とは、男性の髪型の一種で、月代（さかやき）を剃らずに髪全体を पीछेに撫でつけ、後ろで束ねるか髷（まげ）を作ったものを指します。特に髪を結ぶ位置が高いものは、慈姑（クワイ）の形に似ていることから「慈姑頭（くわいがしら）」とも呼ばれていました。

歴史

室町時代までは男性の一般的な髪型でしたが、江戸時代前期からは神官や儒学者、医者などが結うようになり、江戸時代後期には武士の間でも流行しました。また、経済的な理由で頻繁に髪の手入れができない浪人も総髪にしていたようです。

月代を剃る習慣は、戦国時代末期に兜を被った際の蒸れを防ぐために定着しました。江戸時代に入り、武士の一般風俗として広まります。一方、神官や学者は戦闘に携わらないという思想から月代を剃らず、全ての髪を残したことが「総髪」の語源とされています。

時代が下るにつれて、儒学者に限らず思想家一般に総髪が広まり、幕末の頃には勤王派の志士の間で大流行しました。佐幕派にも総髪を結う人が少なくありませんでした。由井正雪、坂本龍馬、近藤勇、徳川家茂、徳川慶喜などの肖像画や写真を見ると、月代を剃らずに総髪にしているのがわかります。

時代劇に登場する医者は総髪を結っていることが多いですが、御殿医など官職についている医師は髪を剃り上げていました。町医者は総髪が一般的でした。この違いは、戦国時代の医師が戦場に動員された際、非戦闘員であることを示すために髪を剃り上げていたことに由来するという説があります。

明治時代になると、西洋化政策の一環として明治4年（1871年）に断髪令が出され、総髪を含む髷は衰退しました。当時、「総髪頭（そうはつあたま）をたたいて見れば王政復古の音がする。」という歌が流行したことからも、総髪が旧時代を象徴する髪型と見なされていたことがうかがえます。

現代においても、総髪は日本人男性の伝統的な髪型の一つとして見ることができます。なお、女性の場合、「総髪」は「そうがみ」と読みます。

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