緑色の髪の少年

『緑色の髪の少年』（原題: The Boy with Green Hair）は、1948年（もしくは1949年）に公開されたアメリカ合衆国のファンタジードラマ映画です。鮮やかなテクニカラーで彩られた本作は、ジョゼフ・ロージー監督、ロバート・ライアン、パット・オブライエン、ディーン・ストックウェルらが出演しています。

本作の原作は、ベッツィ・ビートンが1946年に発表した同名短編小説です。プロデューサーのドア・シャリーが映画化権を獲得し、ロージー監督に白羽の矢を立てました。1947年後半に製作が決定し、翌年2月に撮影が始まり、3月には完成したとされています。

映画は当初から、反戦と寛容というメッセージ性の強い作品として評価されていました。冷戦の開始と赤狩りが社会を覆っていた時代背景が、作品に重くのしかかります。原作では差別が主なテーマでしたが、ロージー監督はそこに反戦のメッセージを加えました。

しかし、製作元のRKOは経営難に陥っており、映画が完成した1948年5月には、ハワード・ヒューズが経営権を握りました。ヒューズは「映画は娯楽に徹すべきで、社会性を持つべきではない」という信念から、映画の再編集や撮り直しを要求します。RKO側は抵抗を試みましたが、最終的にはトーンを弱める再編集を受け入れることになりました。この出来事により、シャリーはRKOを去り、ロージー監督もヒューズによって仕事を干され、ヨーロッパに移住せざるを得ませんでした。

作品に彩りを添えたのは、ナット・キング・コールが1948年3月に発表したヒット曲「ネイチャー・ボーイ」です。この曲は本作のテーマソングとして使用され、100万枚以上のセールスを記録しました。作曲家のエデン・アーベスには、1万ドルという高額な使用料が支払われたとされています。これは、原作者ビートンへの支払額をはるかに上回っていました。

物語は、親戚に預けられていた少年ピーターが、小さな町でフライ爺さんと暮らすことから始まります。フライ爺さんの愛情に包まれたピーターは学校に通い、友達も作りますが、ある日、自分が戦災孤児であることを突きつけられます。両親の死を受け止めきれないピーターは、翌朝、緑色の髪になってしまいます。

緑色の髪は、周囲からのいじめを招き、ピーターは森へ逃げ込みます。そこで、彼は戦災孤児のポスターに描かれていた子供たちと出会います。子供たちは、ピーターの緑色の髪を「善の象徴」であり、戦争の悲惨さを訴えるものだと説明します。

ピーターは町の人々に自分の境遇を訴えますが、理解を得られません。髪を剃るよう求められたピーターは、最初は抵抗しますが、フライ爺さんの説得を受け入れ、髪を剃ります。しかし、涙を流すピーターの姿は、周囲の人々に深い反省を促します。フライ爺さんの謝罪にも関わらず、ピーターは家出しますが、最終的にはフライ爺さんの元に戻り、緑色の髪に誇りを取り戻し、再び緑色の髪が生えてくることを願って物語は幕を閉じます。

キャストには、ピーター役のディーン・ストックウェル、エヴァンス博士役のロバート・ライアン、フライ爺さん役のパット・オブライエンらが名を連ねています。

興行的には赤字に終わったとされ、42万ドルの損失を出したという情報もあります。当時の批評では、脚本の甘さや、緑色の髪の象徴性が曖昧であることなどが指摘されました。しかし、現代の評価は高く、Rotten Tomatoesでは批評家からの高評価が82％に達しています。一般視聴者の評価も高く、本作は、時代の悲しみと希望を織り交ぜた、忘れがたい作品として、今もなお多くの人々の心に響き続けています。

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