線香花火 (さだまさしの曲)

線香花火についての考察

『線香花火』（せんこうはなび）は、1976年11月25日にリリースされたさだまさしのシングルであり、彼のソロ・デビュー曲です。この曲は、さだの音楽キャリアの新たな出発を象徴していますが、その背景にはさまざまな出来事が絡んでいます。

デビュー前の経緯

さだまさしは、長年活動したグループ「グレープ」を1976年4月に解散しました。これは彼自身の体調不良や、音楽に対する方向性への閉塞感が原因です。その後、しばらく静養していたさだは、長崎放送などの就職活動を試みましたが、期待していたようには進展しませんでした。この困難な時期、元・赤い鳥のドラマーである渡辺俊幸とのユニットを模索しましたが、渡辺はユニットの結成を拒み、彼はアレンジャーやバックバンドのリーダーとして協力することを選びました。このような背景を経て、さだまさしは1976年11月に遂にソロデビューを果たしました。

シングルとアルバムの関係

『線香花火』は、同時にリリースされたアルバム『帰去来』に収録され、アルバムからのシングルカットの性格が強い作品です。にもかかわらず、さだの初めてのベストアルバム『昨日達…』の選曲の際、重要なデビュー曲でありながら、このシングルは選外となりました。また、彼のライブパフォーマンスでは、デビュー曲として「雪の朝」を優先して紹介することもあります。

アルバム『帰去来』は商業的には成功を収めたものの、シングルとしての『線香花火』は必ずしもヒットを記録しませんでした。

曲のテーマと情景

『線香花火』というタイトルは、さだの故郷である長崎の精霊流しの夜に大量の花火を燃やす伝統からインスパイアを受けています。この伝統的な行事では、精霊流しの後、静かな花火、特に線香花火が楽しまれるのです。この楽曲は、晩夏の情景を美しく描写しており、線香花火の火球が落ちる瞬間の「ジュッ」という擬音で曲が締めくくられています。さだ自身はこの曲について、始まりは「ひとつふたつみっつ」と進み、終わりは「ジュウ（10）」という仕掛けを持っていると語っています。

もう一つの収録曲『指定券』

シングルのB面に収録されている「指定券」は、一度は恋人と別れ、故郷への帰還を決意する主人公の揺れ動く思いを描いています。この曲は、東京駅が舞台になっており、ましてやイントロには「…16時30分発さくら号、長崎・佐世保行き、間もなく発車致します。」という東京駅のアナウンスが流れます。この「さくら号」は、約30年後にリリースされるアルバム『とこしへ』の中でもテーマとして扱われることになります。

まとめ

『線香花火』とそのB面の「指定券」は、さだまさしの音楽の初期段階を支える重要な作品であり、彼の歌詞やメロディには故郷や自身の感情が色濃く反映されています。さだの音楽への情熱と、多様な人間ドラマへの深い洞察力が感じられるこの作品は、今なお多くのリスナーに愛されています。

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