とこしへ

アルバム『とこしへ』について

シンガーソングライターのさだまさしが2005年に発表したアルバム『とこしへ』は、彼のソロとしては31枚目にあたります。この作品は同年9月7日にリリースされ、同名の楽曲が5曲目に収められています。また、同年の9月から翌年4月にかけて行われたコンサートツアーでもこのタイトルが使用されました。

背景

この年は日本の戦後60周年にあたる特別な年であり、さだまさしにとっては新たな区切りを意識する時期でした。彼は1986年から続けていた『夏・長崎から』の活動のフィナーレを迎える前の1年間であり、彼のキャリアにおいての重要なターニングポイントとも言えます。特に、台風の中で行った日本武道館の『3333回コンサート』は、その象徴として記憶に残る出来事であり、心の奥底から新たな活力を得る契機となりました。また、本アルバムは久々にオリコンのトップ10入りを果たしました。

収録曲の紹介

アルバムには多様なテーマが反映された楽曲が収録されています。

• - さよならさくら: この曲は、長崎と東京を結んでいた寝台特急「さくら」を舞台にしています。失恋した女性が故郷に帰る心情を描写しており、さだ自身の過去の挫折と帰郷の思いが反映されています。彼はこの寝台特急に乗った際の感情をエッセイでも述べています。

• - 冬物語: アルバム発売日に行われたコンサートで披露された楽曲です。この年、彼はサッポロビールの「冬物語」という上に自身がデザインを手掛けました。

• - ぬけみち: 季節の移ろいと、対照的な意味合いの「ぬけみち」を描いた歌です。古典的な表現が散りばめられています。

• - ちからをください: この歌に表される「力」は、暴力ではなく平和を守るための象徴的なリクエストです。

• - とこしへ: 誰もが平和と幸福を願うさだの想いが込められた作品です。

• - 手紙: りんけんバンドの照屋林賢とのコラボレーション楽曲で、前作の「恋文」に対するアンサーソングとなっています。

• - 秋麗（あきうらら）: 晩秋の信州の景色を古典的な言葉を使って表現した歌です。テレビ信州の25周年を祝う意味が込められています。

• - 女優: 女性の人生観と心情を表現した楽曲で、さだはアルバム『日本架空説』に収められた「舞姫」の進化形とも言える作品です。

• - MOTTAINAI: ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイに感謝を伝える内容で、視点を現代社会に向けた警笛的なメッセージを含む曲です。

• - 長崎の空: さがの20年間にわたる活動に感謝を込めた歌で、時に疑念を持って接されていたその活動の意義を強調しています。

• - 記憶: 恋人を失った男性の視点から「思い出」の大切さを示す感動的な作品です。

参加ミュージシャン

本アルバムには多様なミュージシャンが参加しており、ギターやシンセサイザーには石川鷹彦、ピアノには倉田信雄や紺野紗衣が名を連ねています。また、ベースには斉藤誠や高水健司が演奏を担当しており、各曲とともにさだまさしの音楽が彩られています。

結論

『とこしへ』は、さだまさしの音楽的表現の幅の広さや、深い哲学的な問いかけを持った作品であり、彼のコンサートツアーや人生の一部としても重要な意味を持っています。聴く者にさまざまな感情を呼び起こすこのアルバムは、日本の音楽シーンにおける貴重な存在となっています。

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