縄文少年ヨギ

『縄文少年ヨギ』は、水木しげるが描く日本の漫画作品です。1976年に『週刊パワァコミック』で連載され、縄文時代を舞台にした少年ヨギの冒険物語が展開されます。

物語の舞台は、現代の考古学的な知見とは異なるものの、原始社会における人々の生活がリアルに描写されています。飢えや死と常に隣り合わせの厳しい環境の中で、主人公のヨギは、家族や村を守るために様々な困難に立ち向かいます。水木しげるは、考古資料だけでなく、戦中・戦後にラバウルで過ごした経験から、現地の住民との生活を参考に縄文時代の物語を創作したと考えられています。特に、ニューギニアで親しんだ原住民の生活様式と、作中に登場するドングリ村の民の描写には、共通する部分が多いと指摘されています。

物語は、ドングリ村に住む少年ヨギが、占い師のおばばのお告げに従って旅立つところから始まります。ヨギは他所の村で捕虜になるも、機転を利かせて黒曜石を手土産に村に帰還。その後も、イネ探し、大鼠や怪物との戦い、花嫁を賭けた村の行事への参加など、数々の冒険を経験します。しかし、村は大飢饉に見舞われ、長老は村全体での大移動を決意します。

物語には、個性豊かなキャラクターが登場します。

ヨギ: 本作の主人公。10歳の少年で、ドングリ村で両親と2人の弟と暮らしています。特別な能力はありませんが、勇気と知恵で多くの困難を乗り越えます。敵部族に捕らわれた際、実験台として初めてナマコを食べた人物でもあります。
おばば: ドングリ村の占い師。神のお告げを伝え、村の行く末を決定する役割を担っています。「カミサマの石」によって命を落としますが、後にカラスに生まれ変わり、ヨギを助けます。
ヨギの父: 戦で負傷し、その古傷が悪化して寝込むようになり、村の移動の際に一人残ることを決意します。その後、黄泉の入り口でヨギと再会し、自分が死んだことを伝えます。
ヨギの母: 夫を亡くしてからは、家族を守るために奮闘します。黄泉の穴に迷い込んだヨギを助けるため、餓鬼と戦うなど、勇敢な一面を見せます。
長老: ドングリ村の長老で、村の様々なことを取り仕切ります。ヨギを信頼しており、村の代表に推薦したり、神事への出場資格を与えたりします。
シャン: 長老の娘で、花嫁候補。ヨギの花嫁となりますが、「争いのつぼ」からヨギを庇って命を落とします。
フルトド: ドングリ村の青年。シャンを奪われた恨みからヨギを殺そうとしますが、「争いのつぼ」の事件以降、ヨギを助けるようになります。
迷い子: ヨミの村の孤児。ドングリ村に迷い込みますが、ヨギに助けられます。後に、ヨギがヨミの村で「カミサマの石」に捕らわれた際、身代わりとなってヨギを助けます。

物語には、様々な精霊や神が登場します。

花の精: 自然現象に紛れて悪さをする精霊で、人に憑くと養分を奪い、体を痩せ細らせます。
セノ神: 箱に宿る神で、人に憑いた悪霊を払う力を持っていますが、扱いを誤ると人に害を及ぼすこともあります。
カミサマの石: ヨミの村の守り神で、捕らえられた人は人の生死を司る役目を負わされます。この石で人型を刻むと新たな人間が生まれ、削ると人間が死にます。
争いのつぼ: この壺を持つと、何でも思い通りになる代わりに争いが起こるようになります。所有者が死ぬと争いは止みます。
祖先神: ドングリの古木に宿るドングリ村の祖先の霊。ヨギの母が重篤の際に翁の姿で現れ、ヨギを手助けします。
山の精: 河童のような姿をした山の精。鳥語を解する必要がありますが、怪物（リュウ）を退治できる仙果を持っています。

『縄文少年ヨギ』の単行本は、長年にわたり様々な出版社から刊行されています。しかし、初期の単行本には未収録の回があるものが多く、全話収録された単行本は、ちくま文庫版、マガジン・ファイブの愛蔵版、水木しげる漫画大全集のみとなっています。

主な書誌情報:

『縄文少年ヨギ』 双葉社〈パワァコミックス〉、1976年11月
『カラー版 妖怪まんが 縄文少年ヨギ』 小学館〈小学館入門百科シリーズ〉、全2巻、1985年10月
『異界への旅(1) 愛蔵版』 中央公論社、1990年5月
『縄文少年ヨギ』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、1992年7月
『水木しげる妖怪傑作選3 縄文少年ヨギ』 嶋中書店〈アイランドコミックスPrimo〉、2005年1月
『縄文少年ヨギ 愛蔵版』 マガジン・ファイブ〈レジェンドコミックシリーズ〉、2007年10月
『水木しげる妖怪傑作選3 縄文少年ヨギ』 中央公論新社〈ChukoコミックLite Special〉、2008年9月
『縄文少年ヨギ』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2014年9月

『縄文少年ヨギ』は、水木しげるの独特な世界観と、原始社会を舞台にした壮大な冒険物語が魅力的な作品です。ぜひ一度、手に取って読んでみてください。

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