縫田清二

縫田清二の生涯

縫田清二（ぬいた せいじ、1922年1月20日 - 1995年5月12日）は、日本の社会思想史家であり、横浜国立大学の名誉教授としてその名を刻んでいます。彼の人生は、国際的な環境と激動の時代を背景に、学問と社会への深い関心を軸として展開されました。

生い立ちと学歴

縫田清二は、イギリス領インド帝国ボンベイ（現ムンバイ）の総領事館で誕生しました。父親が外交官であったため、幼少期は日本だけでなく、マニラなど海外での生活も経験しました。暁星小学校、暁星中学校を経て、東京外国語学校フランス語貿易学科に進学しますが、学徒出陣のため半年繰り上げで卒業。その後、海軍に入隊し、情報活動に従事しました。

終戦後、三井物産に入社するものの、学問への情熱を捨てきれず、東京商科大学（現在の一橋大学）に進学。同大学の研究科を修了後、横浜国立大学経済学部の助手として教鞭を執り始め、社会思想史の研究に没頭しました。講師、助教授を経て教授に昇進し、その間にはイスラエル政府の国費留学生としてヘブライ大学に留学、マルティン・ブーバーに師事するなど、研究者としての幅を広げました。

大学での活動と研究

横浜国立大学では、経済学部長も務めましたが、大学闘争の激化により教授会や評議会との意見調整が難航し、辞任。しかし、その傍ら、父の人脈を生かし、経済学部附属貿易文献資料センター（後のアジア経済社会研究センター）を設立し、自ら初代センター長に就任しました。定年退官後は、成城大学法学部教授として教鞭をとり、ユートピア思想の研究に力を注ぎました。彼の研究は、個と共同体の関係、社会の理想像を追求するものであり、現代社会にも通じる重要な問いを投げかけています。

家族と人脈

妻はジャーナリストの縫田曄子。義兄には元駐リビア特命全権大使の太田新生がおり、彼は海軍時代からの親友でもありました。外交官の父を持つことから、縫田清二は幅広い人脈を築き、その後の活動に大きな影響を与えました。

受賞と著作

1956年には、カンボジア政府から文化功労賞を受賞しました。著書には『ユートピアの思想 : 個と共同の構想力』（2000年）があり、彼のユートピア思想への深い探求が示されています。この著作は、彼の研究活動の集大成とも言えるもので、後世の研究者たちに大きな影響を与えています。

晩年と遺産

2002年には、遺族から一橋大学附属図書館に、彼の研究資料や東京商科大学時代の記録などが寄贈されました。これらの資料は、彼の研究活動の貴重な足跡を物語るものであり、後世の研究者にとって重要な資料となっています。

縫田清二の生涯は、激動の時代を背景に、社会思想史の研究を通じて、人間と社会の本質に迫ろうとしたものでした。彼の学問に対する真摯な姿勢と、国際的な視野は、現代においても学ぶべき点が多く、その功績は色褪せることなく、後世に語り継がれるでしょう。

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