織田広良

織田広良とは

織田広良（おだ ひろよし）は、戦国時代中期から後期にかけて活躍した武将です。通称を源三郎、あるいは勘解由左衛門と称し、織田與康や信益といった別名でも知られています。父は織田信康であり、これはすなわち、尾張国の戦国大名として天下統一に乗り出した織田信長の従兄弟にあたる人物です。

かつて、広良は津田信益と同一人物であると見なされることもありましたが、現在では別人であったという見方が一般的です。また、通称に勘解由左衛門を用いたことから、織田伊勢守家（織田氏の庶流）の養子に入ったとする説も存在しますが、その詳細は定かではありません。広良は美濃国十九条城の城主を務めていたことが伝えられています。

生涯と事績

広良は、父である織田信康の子として生まれました。父の没後、広良は兄の織田信清とともに犬山城を拠点とし、しばらくの間、独自の勢力を保っていました。しかし、尾張国の上四郡における守護代勢力に対抗する必要性から、兄と共に織田信長に臣従することを決めます。これは、織田一族が結束して外敵や内部の対立勢力に立ち向かうという、信長による支配体制確立の一環でもありました。

信長の家臣となってからの広良は、その軍事行動を積極的に支援しました。特に、信長が尾張国内を統一していく過程における重要な合戦、例えば浮野の戦いや、岩倉城攻めなどにおいて、広良は信長方を支え、武功を挙げたとされています。これらの戦いでの活躍は、広良が信長にとって信頼できる一族の武将であったことを示しています。

十四条の戦いと最期

広良の生涯における最も重要な局面であり、また最期を迎えた地となったのが、美濃国での戦いです。永禄5年（1562年）5月、織田信長は美濃国への侵攻を開始し、斎藤氏との戦いを本格化させました。この時、信長は佐久間信盛を大将として砦の築城を進めさせており、広良は前線に位置する十九条城の守将を任されていました。十九条城は美濃攻めの重要な拠点の一つであり、斎藤軍にとっては攻略すべき標的でした。

ある時、降り続いた大雨によって付近を流れる川が氾濫し、洪水が発生しました。美濃の斎藤軍は、この自然災害による混乱と、城の守りが手薄になった隙を見逃しませんでした。斎藤軍は一斉に十九条城への攻撃を開始しました。

この急報を受けた織田信長は、驚くべき行動に出ます。氾濫し、荒れ狂う危険な川を渡河するという困難な状況を厭わず、自ら兵を率いて救援に駆けつけたのです。信長の迅速な救援は、窮地に陥っていた広良や十九条城の将兵にとって大きな希望となりました。

信長率いる織田軍が到着したことを知った斎藤軍は、迎撃のために十四条（現在の岐阜県本巣市十四条付近）の地へ移動し、ここで両軍は激突しました。これが「十四条の戦い」です。この合戦において、織田広良は先陣を切って敵陣に突入するなど、勇敢に戦ったと伝えられています。しかし、激しい戦闘の中、広良は斎藤方の武将である野々村正成によって討ち取られたとされています。勇敢な武将である広良は、信長の援軍が駆けつけたにもかかわらず、残念ながらこの戦場でその生涯を終えることとなりました。

墓所と異説

織田広良の墓所は、現在の愛知県名古屋市西区中小田井にある善光寺別院願王寺に伝えられています。この寺院は、広良が生きた時代の記憶をとどめる場所となっています。

また、広良に関しては、後世に伝えられる系図の中に興味深いいさつがあることが知られています。一般的に織田信長の妹であり、浅井長政や柴田勝家の妻となったことで有名な「お市の方」は、通説では織田信秀の娘、すなわち信長の同腹あるいは異腹の妹であるとされています。しかし、『織田系図』と呼ばれる一部の史料には、お市の方は広良の娘であったとする記述が見られるのです。もしこれが事実であれば、お市の方は信長の妹ではなく、従弟である広良の娘、つまり信長にとっては姪にあたる人物ということになります。この説はあくまで異説であり、現在の歴史研究においては一般的に受け入れられてはいませんが、お市の方の出自に関する謎めいた一面を示す記述として知られています。

織田広良は、信長の従兄弟としてその初期の勢力拡大に貢献し、美濃攻めの最前線で散った武将でした。その名は十四条の戦いの犠牲者として、またお市の方の出自に関する異説の中で、わずかに今日に伝えられています。

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