罪の声

小説『罪の声』の概要

『罪の声』は、塩田武士によるサスペンス小説で、2016年に発表されました。この作品は、実際の未解決事件であるグリコ・森永事件をモチーフにしており、事件に迫る人々の心理描写と緻密なプロットが高く評価されています。その証として、2016年度の週刊文春ミステリーベスト10で国内部門の第1位を獲得し、また第7回山田風太郎賞も受賞しました。さらに、2020年には土井裕泰監督による映画化もされ、小栗旬が主演を務めました。

執筆の背景

塩田武士は大学時代にグリコ・森永事件に関する書籍を読み、その中で脅迫電話に使用された子どもの声に強い興味を抱きました。彼自身と同年代であった子どもたちの人生に心を寄せ、いつかこの事件を題材にした小説を書きたいと願っていました。しかし、彼は新聞社に就職し記者となりました。

小説家として2010年にデビューした後も、彼が描きたいテーマについて思い悩む日々が続きました。初めての執筆を試みたものの、担当編集者からは筆力不足を理由に断られてしまいました。そのため、さらに5年の月日を要し、ようやく執筆に取り掛かることができました。執筆中は、1984年から1985年にかけての新聞を丹念に調べ、事件の詳細を正確に再現する努力をしました。作中の犯人はフィクションですが、事件の発生日時や脅迫状、報道内容は可能な限り事実に基づいています。

あらすじ

物語は、京都市でテーラーを営む曽根俊也が主人公です。彼は2015年の夏、父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを発見します。ノートには英語の文章とともに「ギンガ」と「萬堂」の文字が記されていました。カセットテープを再生すると、子どもの声が流れてきました。その声は、31年前のギンガ萬堂事件の脅迫者の声そのものであり、俊也はそれが幼少期の自分の声であると確信します。

彼は父の友人でもある堀田信二に打ち明け、調査を開始します。堀田は俊也のグループに協力し、俊也の伯父についての情報を探し始めます。一方、大日新聞の記者である阿久津英士も、同じくギンガ萬堂事件に関する記事を執筆するために奔走しています。二人の捜索はそれぞれの道を辿りながら交差し、次第に事件の真相に近づいていきます。

登場人物について

• - 曽根俊也：京都でテーラーを営む36歳の男。父の声とノートに惹かれ、自らの過去を追いかける。
• - 堀田信二：著名なアンティーク家具商で、俊也の調査に協力。61歳。
• - 阿久津英士：大日新聞の文化部記者で、事件について深く調査する。
• - 生島秀樹：元滋賀県警の刑事で、事件に関わりを持つ。
• - 曽根達雄：俊也の消息不明の伯父であり、事件との関係が疑われる人物。

書誌情報とメディア展開

『罪の声』は講談社から2016年に出版され、さらに2019年には講談社文庫版も刊行されています。また、2017年から2018年には漫画版も展開されました。オーディオブックも配信され、さまざまなキャストによる朗読が行われています。

本作は、異なるメディアでの展開が続き、映画化されることでますます多くの観客にそのストーリーが届けられました。特に、小栗旬と星野源の共演は大きな話題を呼び、映画は多数の賞を受賞しました。

結論

『罪の声』は、個人の過去と未解決事件が交錯するサスペンス作品です。塩田武士の巧みな文筆が生き、緊張感あるストーリー展開が読者を惹きつけます。この作品は、グリコ・森永事件の深淵を掘り下げることに成功し、その社会的背景についても考察を促します。

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