美しいメロディーにのせた題韻詩

美しいメロディーにのせた題韻詩

『美しいメロディーにのせた題韻詩』（フランス語原題：Bouts-rimés commandés sur le bel air）は、17世紀フランスの偉大な劇作家、モリエールによって書かれた詩作品です。この作品は「題韻詩」（ブー・リメ、bouts-rimés）という特定の形式を用いており、その制作年代については現在も明らかになっていません。

題韻詩とは

題韻詩とは、あらかじめ提示された韻の配列に従って作られる詩の形式です。17世紀フランス、特にサロンなどの社交界において、知的な遊びとして非常に人気がありました。参加者は、与えられた韻を踏む言葉を、いかに機知に富み、かつ自然な流れで織り込めるかを競いました。この形式は1640年代頃から流行し始め、1670年代に至るまでその人気は衰えることがありませんでした。

成立と収録

『美しいメロディーにのせた題韻詩』が初めて公にされたのは、モリエールの没後、1682年にラ・グランジュによって編纂・刊行された初のモリエール全集においてです。この全集の中で、本作は戯曲『エスカルバニャス伯爵夫人』と共に出版され、『エスカルバニャス伯爵夫人』のすぐ後に配置されていました。この収録順から、『エスカルバニャス伯爵夫人』の上演時に共に披露された作品の一部が、この題韻詩という形で伝えられている可能性も考えられます。

他作品との関連

モリエールは、その代表的な喜劇作品の中でも題韻詩に言及しています。例えば、彼の傑作の一つである『女房学校』の中にも、題韻詩が登場する場面があります。特に、第1幕第場において、主人公アルノルフが婚約者アニェスの無知蒙昧さを周囲に示そうとする台詞の中で、題韻詩が引き合いに出されます。しかし、このアルノルフの台詞が、当時の社会規範から見て卑猥であるとして、激しい批判の対象となりました。

モリエール自身は、これらの批判に対し沈黙を守ることはありませんでした。彼は続編とも位置づけられる『女房学校批判』を執筆し、その中で自作への批判に対して巧みに反論を展開しています。このように、『美しいメロディーにのせた題韻詩』という作品自体は、その内容や成立の経緯に不明な点が多いものの、当時の文学形式である題韻詩への理解を深める上で、また、モリエールの他の主要作品、特に『女房学校』を巡る論争の文脈を知る上で、貴重な手がかりとなる一編と言えるでしょう。

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