アロイス・リーグル

アロイス・リーグル（1858年1月14日 - 1905年6月17日）は、オーストリアの美術史家であり、ウィーン学派の創始者の一人とされています。彼は、従来の美術史研究に新たな視点を取り入れ、美術作品を単なる技術の発展としてではなく、各時代の「芸術意欲（Kunstwollen）」の表れとして捉える独自の理論を展開しました。

生涯と学問

リーグルはリンツで生まれ、ウィーン大学で哲学と歴史を学びました。また、ジョヴァンニ・モレッリのもとで美術品鑑識の方法を研究し、初期から美術史研究者としての基礎を築きました。学位取得後、歴史研究所やオーストリア帝室芸術産業博物館（現オーストリア応用美術博物館）で研究員、学芸員として活動しました。博物館ではテキスタイル部門の責任者として、東洋のカーペットに関する研究などを行いました。

1893年には、『様式への問い：文様装飾史の基盤構築』を出版し、美術史研究者としての名声を確立しました。この著作で、彼は文様装飾の歴史を独自の視点から分析し、美術史における革新的な研究者としての地位を確立しました。1897年にはウィーン大学の教授に就任し、バロック美術や美術様式の発展と歴史文化の関係について講義を行いました。

研究内容と業績

リーグルの研究は、従来の美術史研究に対する批判的な視点から始まりました。従来の美術史では、美術の進歩を技術的能力の発展として捉える傾向がありましたが、リーグルは、各時代には独自の「芸術意欲」が存在し、それが美術作品の形式や内容に影響を与えると主張しました。「芸術意欲」とは、対象や創作の方式に依存せず、独立して成立する形式への意志であり、能力が必ずしも美を生むとは限らないと考えました。

彼は、近東、ギリシア、ローマの古美術に関する紋様の分析を通じて、幾何学紋様が原始的な段階で達成されていたにもかかわらず、芸術的価値としては低いと指摘しました。彼の芸術観は、ウィルヘルム・ヴォリンガーなどの研究者に受け継がれ、後の美術史研究に大きな影響を与えました。

リーグルの著作は多岐にわたり、『東洋のアンティーク・カーペット』、『末期ローマの美術工芸』、『オランダ集団肖像画』など、様々なテーマを扱っています。これらの著作を通じて、彼は美術史研究における新たな視点を提示し、美術作品の歴史的、文化的背景を深く掘り下げる研究方法を確立しました。

著作リスト

Die ägyptischen Textilfunde im Österr. Museum (Vienna, 1889).
Altorientalische Teppiche (Leipzig, 1891. Reprint Mittenwald, Mäander Kunstverlag, 1979. Mit einer bibliographischen Einführung von Ulrike Besch).
Stilfragen : Grundlegungen zu einer Geschichte der Ornamentik, 1893
Volkskunst, Hausfleiß, und Hausindustrie (Berlin, 1894).
Ein orientalischer Teppich vom Jahre 1202 (Berlin, 1895).
Die spätrömische Kunstindustrie nach den Funden in Österreich-Ungarn (Vienna, 1901 und 1923).
Das holländische Gruppenporträt, 1902.
Der moderne Denkmalkultus : sein Wesen und seine Entstehung, 1903
Die Entstehung der Barockkunst in Rom, 1908
Gesammelte Aufsätze, 1929
Historische Grammatik der bildenden Künste, posthum von K. M. Swoboda und O. Pächt, 1966.

参考文献

「アーロイス・リーグル著作目録」（『ヴァフィオの杯』pp. 36-48）
ハンス・ゼドルマイア「リーグル教説の精髄」（同、pp. 11-35）
W・ヴォリンゲル『抽象と感情移入』（草薙正夫訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1953）
* W・ベンヤミン｢厳密なる学問｣（『ベンヤミン・コレクション：5』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2010、所収）

癌により47歳で早世しましたが、彼の思想は後世に受け継がれ、美術史研究に多大な影響を与え続けています。

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