美鉄バス

美鉄バス（びてつバス）は、かつて北海道美唄市を拠点にバス事業を展開していた運輸事業者です。その歴史は、親会社であった三菱鉱業や三菱鉱業セメントの事業再編と深く関わっています。

会社の源流は、1948年（昭和23年）11月25日に美唄鉄道がバス事業に参入し、「美唄鉄道バス」として美唄〜東明間で運行を開始したことに遡ります。翌1949年（昭和24年）には茶志内線の運行も始まり、事業の基礎が築かれました。

1950年（昭和25年）4月25日、親会社である三菱鉱業株式会社（現在の三菱マテリアル株式会社）が美唄鉄道を吸収合併しました。これにより、バス事業は同社の美唄鉄道事務所 自動車課として再編成され、当初は「三菱美唄鉄道バス」と呼ばれ、後に1961年（昭和36年）5月1日からは「三菱鉱業バス」と呼称を変更しました。三菱鉱業時代には、美唄地区および大夕張地区において積極的な路線展開が行われました。美唄地区では、1951年（昭和26年）に農村三線（中村線、上美唄線、中小屋線）が開設され、炭山線も1952年（昭和27年）に常盤台まで、1955年（昭和30年）には有明通り経由の経路が新設されるなど網が広がりました。1960年代には拓北線、進徳線、沼ノ内線なども運行を開始しました。一方、大夕張地区では1956年（昭和31年）9月16日に山内線が開業したほか、1967年（昭和42年）には清水沢線、1969年（昭和44年）には南部線が運行を開始し、地域内の移動手段を担いました。

広域路線としては、1962年（昭和37年）10月7日に夕張バス（後の夕鉄バス）との協定による夕張〜大夕張間の急行バス運行が始まり、1965年（昭和40年）12月11日には札幌〜大夕張間の特急バスも運行を開始し、都市間輸送の一翼を担いました。

しかし、1970年代に入ると、石炭産業の衰退に伴い、事業環境に変化が現れます。1972年（昭和47年）6月1日には、美唄地区の中村線、茶志内線、拓北線、進徳線といった一部路線が美唄市営バス（当時）へ譲渡され廃止されました。さらに1977年（昭和52年）12月1日には上美唄線も同様に美唄市営バスへ譲渡されました。

1973年（昭和48年）4月には、親会社である三菱鉱業が三菱鉱業セメント株式会社へと社名を変更しました。

そして1981年（昭和56年）4月1日、三菱鉱業セメントはバス事業を分社化し、「美鉄バス株式会社」が設立されました。美鉄バスは、三菱グループから独立したバス事業者として再スタートを切りました。1985年（昭和60年）1月28日には、東急系列の網走交通株式会社が美鉄バスを買収し、同社の子会社となりました。

美鉄バス時代の路線は、美唄本社管内では美唄駅前から東明、アルテピアッツァ美唄、我路、国設スキー場方面を結ぶ系統や、労災病院を経由する系統、南美唄方面への系統などを運行していました。大夕張営業所管内では、札幌特急線や夕張駅前との間の路線を運行し、特に夕張駅前線は夕鉄バスとの相互乗り入れも行っていましたが、夕張シューパロダム建設に伴う住民の集団移転により、1997年（平成9年）11月30日をもって大夕張地区から撤退しました。

また、美鉄バスは路線バス事業だけでなく、貸切バス事業も展開していました。貸切バス事業は1949年（昭和24年）に美唄地区で開始され、1963年（昭和38年）には札幌営業所を開設するなど、事業範囲を広げていました。大夕張地区でも1963年（昭和38年）6月から貸切事業が行われていました。

美鉄バスは、事業環境の変化や利用者の減少などにより、経営の継続が困難となり、2002年（平成14年）3月31日をもって営業運行を終了しました。そして、翌日の2002年（平成14年）4月1日には会社が解散し、その歴史に幕を下ろしました。美唄本社の路線の一部は、廃止後、美唄市によって「美唄市民バス東線」として継承され、現在も運行されています。

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