群衆の中で

オフコースの原点とも言える1stシングル「群衆の中で / 陽はまた昇る」について解説します。

概要

1970年4月5日にリリースされたこのシングルは、オフコース（当時の表記はジ・オフ・コース）にとって初の作品です。ヤマハ・ライト・ミュージック・コンテストでの入賞がきっかけとなり、レコード会社からの打診を受けて制作されました。

制作の背景

1969年11月、オフコースはヤマハ・ライト・ミュージック・コンテスト全国グランプリ大会でフォーク部門第2位に入賞。コンテストですべてを終えるつもりでしたが、入賞を機に活動を続けることになります。その後、ヤマハからレコード制作の話が持ち込まれ、東芝音楽工業からのリリースが決定しました。メンバーは軽い気持ちでこの話に応じましたが、デビューシングルはヤマハの作曲コンクール応募作品に、作詞家の山上路夫が詞をつけたものでした。レコーディングには小田和正、鈴木康博、地主道夫の3人が参加。演奏はスタジオ・ミュージシャンが担当し、オフコースは歌唱のみを担当しました。

リリース後の活動とメンバーの葛藤

レコードのリリース後、ヤマハはオフコースを売り出そうとしましたが、小田と地主は卒業論文の執筆に追われていました。そのため、テレビやラジオへの出演オファーを断り続け、コンサートを中心とした活動を続けました。メンバー間の意見の相違もあり、ヤマハとの関係はこのシングルのみで終了しました。

小田和正は当時を振り返り、「レコードを売りたいという意識は全くなかった」と語っています。チャートに対する意識も薄く、自分たちが音楽業界にいるという実感もなかったようです。

赤い鳥との比較

一方、コンテストでグランプリを獲得した赤い鳥は、副賞としてヨーロッパでアルバムをレコーディングし、プロとしての道を歩み始めていました。オフコースとは対照的な状況でしたが、ヤマハ関係の仕事で顔を合わせる機会は多く、「8人の音楽会」といったジョイントコンサートも企画されました。

楽曲のその後

「群衆の中で」は、「8人の音楽会」や「ファミリー・コンサート」で演奏されたほか、鈴木康博のソロコンサートでもレパートリーとして取り上げられました。2012年には、山上路夫の作品を集めたコンピレーションアルバムにも収録されています。

パッケージ

ジャケットは見開き仕様で、内側には「陽はまた昇る」の歌詞とオフコースのステージ写真、右側には「群衆の中で」の譜面が掲載されています。裏面には山上路夫直筆の「群衆の中で」の歌詞が印刷されています。

収録曲

SIDE A
群衆の中で

SIDE B
陽はまた昇る

オフコースの初期の活動を知る上で貴重な1枚であり、その後の活躍を考えると興味深い作品と言えるでしょう。

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