群馬農林専門学校 (旧制)

旧制群馬農林専門学校

旧制群馬農林専門学校（きゅうせいぐんまのうりんせんもんがっこう）は、第二次世界大戦終結直後の1946年、群馬県邑楽郡小泉町（現在の群馬県大泉町）に設立された私立の旧制農林専門学校です。戦後復興期の日本において、農業分野のリーダー育成を目指す理想のもとに設立されましたが、財団の経営が不安定だったためわずか2年余りで閉校し、最終的に財団法人紅陵大学に吸収される形でその歴史を終えました。

設立の背景と開校

太平洋戦争の終結後、群馬県邑楽郡地域に集まった有志たちが中心となり、財団法人群馬農林専門学校が設立されました。彼らは、農業を基盤とした日本の再建を構想し、将来的に幼稚園から大学までを含む包括的な学園都市を築くことを目指していました。この壮大な構想の第一歩として、農村指導者を育成する専門学校の設立が進められました。

学校設立にあたっては、当時文部次官を務めていた同郡出身の山崎匡輔氏が協力しました。校長には農業経済学の権威である鞍田純氏（東京帝国大学助教授、北京大学教授を歴任）が招聘され、旧帝国大学出身者を中心に教員が集められました。1946年6月15日に設置が正式に認可され、農業科、農業経済科、林学科、蚕糸科の4学科（各学科定員30名）を持つ小規模な専門学校として開校しました。当初、校地としては、財団設立に参画した元中島飛行機社員が関与していた縁で、中島飛行機小泉製作所の付属青年学校が使用されていた旧校舎が充てられました。

経営の危機と混乱

しかし、開校直前の1946年2月17日に発令された金融緊急措置令により、財団が予定していた資金調達が極めて困難となりました。計画されていた土地の寄付も認められず、群馬農林専門学校は開校当初から経営上大きな打撃を受けることになります。加えて、戦後の混乱期にあって、教育に必要な設備を整えることもできず、その教育環境は「試験管さえ十分にない」と言われるほど劣悪でした。

学生たちはすぐに教育環境の改善と充実を求め、学校当局に対して強い不満を表明するようになりました。校長の鞍田氏をはじめとする教職員側も、施設の拡充を図るため、学校を群馬県に移管して将来的に農科大学への昇格を目指すことを財団の経営陣に提案しました。しかし、財団側は私立学校としての経営方針に固執し、学生や教職員側の要求に応じなかったため、両者の対立が深まりました。1946年11月25日には、教育環境の向上を求める学生によるストライキが発生し、年を越して続きました。経営陣は学生の要求に対して明確な回答を示さず、学校運営を巡る問題はさらに深刻化しました。その結果、1947年2月には、校長の鞍田氏を含む多くの教職員が一斉に辞職するという非常事態が発生しました。

短命な学校の終焉とその後

教職員の大部分を失った財団は、その後東京農業大学からの支援を得て、教育活動の継続を図りました。しかし、在籍学生数の減少や教育環境の質的低下に歯止めをかけることはできませんでした。結局、群馬農林専門学校は存続が困難となり、1948年4月、文明協会の仲介によって財団法人紅陵大学への移管が決定しました。そして、同年8月2日に文部省より正式な廃止が認可され、群馬農林専門学校は閉校となりました。

閉校後、旧学校の組織は財団法人紅陵大学が設置する紅陵専門学校の群馬分校として再編されました。群馬分校には、紅陵専門学校の開拓科を引き継ぐ形で農業科と農業経済科が設置され、旧群馬農専の学生と開拓科出身者が共に学ぶ状況となりました。なお、紅陵大学への吸収合併以前には、早稲田大学との合併交渉も行われたと言われていますが、進駐軍の影響で校地の払い下げが困難だったため、実現には至らなかったとされています。

その後、学制改革を経て、紅陵専門学校群馬分校は拓殖短期大学群馬分校と名称を改めました。ここには貿易科と農業経済科が置かれました。しかし、拓殖大学内部で農業経済科を農学部に発展させる構想や、荒廃していた東京の小平農場を整備する計画が浮上したことから、群馬分校は1957年3月に東京の本校に統合される形で廃止されました。ただし、これらの計画は最終的には実現せず、拓殖短期大学の農業経済科は、1968年に北海道拓殖短期大学へ譲渡されることになりました。

旧制群馬農林専門学校の設置母体であった財団法人群馬農林専門学校は、学校廃止後は休眠状態が続いていましたが、1999年3月24日に法人設立許可が取り消されています。

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